【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第63章 まっすぐな恋心
『大丈夫だった?』
ノックをすると同時に扉が開いて、唇の動きを読まなくても分かる。
心配してくれてたんだ。
「はい、優しいお父さんですね」
『そうかな?変なことされてない?』
「ふふっ、変なこと?されてませんよ。家族の時間は大切ですからね。私は帰りま......あっ」
見上げた先の彼の顔。
「まつ毛が付いてます。左の目尻の横」
増長さんが目元に触れる。
「えっと......もうちょっと左。行き過ぎです、もうちょっと右?」
しばらくそうしているけど、惜しいところで取れない。
「もうちょっと上?」
バッグから鏡を出そうとすると、
『とって』
唇がそう動いて、右手を握られた。
私は下心の塊なのに、そんな邪な気持ちで彼に触れるのは申し訳なさすぎる。
でも......問答無用と言わんばかりに目の前の彼が目を閉じていて、体制を低くしてこちらに顔を近づける。
本当に綺麗で......もう釘付けになる。
まつ毛長いな。
毛穴あるのかな。
思い出して口元が緩んだ。
前にもこんなこと思ったことあったよね。
右手で頬にそっと触れて、指でそこを拭って......よし、取れた。
気づいて目を開けるかと思ったけど、目は閉じられたままだ。
どうしよう......。
「取れましたよ」って言えばいいのに、この瞬間を手放すのが惜しくて「目を開けるまで待っとこう」って卑怯な考えが浮かぶ。
唇の形も綺麗......あの唇とキス......。
変なこと考えたら、だめだよ!
でも......好きだから、仕方ないのかな?
好きだから......触りたいのは普通だよね?
引き寄せられるように距離が近づいて、
ぱちりとその目が開いた。
顔と顔の距離......その距離はかなり近い。
私、今......とんでもないことをしようとした!
「し、失礼します!!」
赤くなった顔に気が付かれないように、
慌ててその場を後にしたーー。