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【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......

第62章 With my life


でも、それは叶わなかった。

















『倫毘沙......と誰?』


鈍器で頭を殴られたような衝撃。

それは、きっとこういうことを言うんだと思う。


「記憶障害を起こしています」

「記憶......障害......」

竜持くんと同じ。


「前と同じでいつ治るかは分からない。彼の場合はここ数年の記憶だけない状態です」

もう一つ違和感があった。


「先生、声が......」

尋ねる私の声は酷く震えていただろう。


「精神的なショックが大きかったんだろうね......失ってる」

さっき、紡がれた言葉は口の動きを読んだだけ。

彼は記憶と声を失っていた。


「驚いたね......」

「はい......」

言葉になったのはそこまでで、堪えていたのが彼にばれてないといいな。


廊下の壁に背を預けると、立つ気力もなくてズルズルと座り込んでしまった。
涙が止めどなく頬を伝って、胸が痛くて喉は焼けるように熱い。


「声のこと気にしてるの?」

「夢は......」

「お母さんに見つけてもらうこと?」

「アイドルも難しいですよね......」

その夢は今の彼にとって、命と同じくらい大切なものだ。


「自分がそうなれば良かった?」

こちらを見つめる瞳は......きっと全てお見通しなんだろう。


「命懸けで守ってくれたのに本当にそう思うの?」

「でも、彼があんなことになるなら!」

「彼女を助けたことを後悔した?」

「してません」

「それなら、後悔したらダメだよ」

そう言った北門さんは優しく微笑んだ。
どういうこと?

「カズになまえを守らない選択肢はない。例え命を落としても絶対に後悔しないよ?だから、なまえのそんな言葉を聞いたら傷つく。そんなことなまえが一番分かってるよね?」


返事が出来なかった。
本当にその通りで、息が詰まって余計に涙が出てきたから。
そうだよ。彼の決断を応援するって。
彼の決断に、私が勝手に後悔したらだめだ。


「失声症は何かをきっかけに戻ることもあるから、辛いけど前を向こう。俺たちがついてるよ」

沢山注いでくれた愛情に、私は何を返せるんだろう。

北門さんに励まされて、涙はいつしか止まっていた。


「ありがとうございます。一つだけお願いがあるんですけど」
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