【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第60章 決戦の日
良かった......録音もした。
「ありがとうございました」
パッとその手を離すと、座り込んだ彼女に封筒を見せた。
「刃物なんてついてません。これは一番初めに送られてきた手紙。元々そんな物ついてませんし、私は『切った』としか言ってません。封筒も便箋も紙製ですから紙で指を切ったのかも」
私の言葉に加藤さんは黙り込んだ。
「どうして、本気で傷つける気もないのにこんなことを......」
「......のよ」
「えっ?」
「腹が立ったのよ!あなたなんて入社して浅いのに!私はずっと彼のこと......ずっと見てたの。だから、ちょっとビビらせてやろうと思った。本当に傷つける気なんてなかった。
カッターだってちょっと怪我して終わりだろうし、花瓶は離れて落としたから怪我をするなんて思わなくて......あの、瓶の中身はただの水」
やっぱり、そうだったんだ。
「ありがとうございます」
「はっ?」
「確かに、それは悪いことです。でも彼を傷つけることが目的じゃなくて良かったし、私のことさえ傷つけなかった。本当は優しい人なんですよね......なにが目的だったんですか?」
彼女はこちらを怪訝そうに見上げてくる。
「お礼なんて頭おかしいんじゃないの?少しでも彼の視界に入りたかったのよ。婚約者を傷つけられたら、犯人を探し出そうとするでしょ?あなたからしたら、くだらないでしょうね......もう、全部どうでもいい!」
その顔が悲しそうに歪んで、言い終わると同時に彼女は走り出した。
「待ってください!」
すぐ側にあった歩道橋の階段を駆け上がると、向かい側の階段にさしかかる。
追いついて、その腕を掴んだ。
「離してよ!」
加藤さんが腕を振り払おうと暴れるけど、こんな場所で危険だ。
「危ないです!暴れないでください!!」
慌ててその身体を引き上げようとするけど、
「いや!」
振り払われた腕、
落ちる彼女がスローに映ってーー。
咄嗟に身体が動いていたーー。