第59章 それは突然に

「ごめんなさい。その話題に触れられるのは、嫌かと思って......」

「平気だよ。俺の全部を知ってほしい」


良かった。

でも、それなら。


「今まで人と付き合ったことありますか？」

「ええ！突然どうしたの？」
「いや、ずっと気になってて......」

普通は気にならないのかな？


「あると思う？」
「うーん、思います！」
「ふふっ、どうして？」
「そういうことに慣れてるから？」
「うーん、でも昔から『付き合うって何だろう』って。告白されたことはあるけど、やっぱりこの仕事をしてると恋人に寂しい思いをさせてしまうから。そんな時に感情より理性が勝って、俺自身が『会えなくて寂しい』って思えない相手は恋じゃないんだと思う。みょうじさんと出会えたから知ったけどね」

だから、増長さんは結婚の良さが分からないって言ってたんだろうな。

「あと......身体を重ねるのも正直苦手」

そんな増長さんに私はあの偽装結婚式の日に何てお願いを......。

「あの日の......悪行を許してください！」
「違うよ、あの日はお願いしてくれて本当に嬉しかったよ。でも、どうして落ち込んでるの？」

顔を覗き込まれて慌てて顔を両手で隠す。

「初めては私とが良かったです」

大きな手が優しく私の頭を撫でてくれる。

「妬いてるの？『付き合って初めてのキスもファーストキス』って言ったよね？」
「はい......」
「そんな泣きそうな顔、しないで」

手を解かれるとチュッと額に口付けられた。

「男だから好きな人はちゃんとリードしてあげたいんだ。だから、これからの俺は全部貰ってね」
「ふふっ、はい」
「俺にとってみょうじさんはすごく大切だから、沢山触れて気持ち良くしてあげたい。俺のできる全てで愛したい。こんな風に誰かを愛せるなんて毎日が驚きの連続だよ」

優しく見つめられると愛しさが溢れだす。


「あまり見ないでください......」

改めて言い表されると恥ずかしいものがある。


「ふふっ、顔真っ赤」


むくれたままで胸板に口付けると、そのままそこを吸い上げた。

「もっと、私のにしちゃいます！」