【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第56章 僅かな確証
私達は明謙くんと待ち合わせた場所、ガンダーラに向かっていた。
タクシーに乗り込むと、何やらその距離は近い気がする。
「あまり......近付かないでくださいね?」
「どうして?」
三人乗りの後部座席は広々座れるのに、今は左端と真ん中......二人分の席しか使われていない。
「さっきの話......忘れてませんよね?」
「もちろんだよ」
すぐにキラキラした笑顔で返された。
大半の人が、この笑顔で誤魔化されるだろう。
まぁ、変装はちゃんとしてるし......。
「えっと、タクシーの中ではいいですけど「ありがとう」
遮られた言葉に、更に距離が近づいたような気がする。
顔の両側に手を置かれれば......その距離はかなり近い。
「あの、うっかり唇が触れる事故が起きてしまいそうな距離なんですけど......」
「大丈夫だよ。それは、きっと事故じゃないから......」
どういう意味だろう?
至近距離で目が合うと顔に熱が集中して、
「故意だよ......」
鼻に柔らかいものが触れた。
「キタコレって......キス魔なんですか?」
そう言って首を傾げると、おかしそうに笑われる。
「ははっ、なまえにはそうかもね」
「え......?」
「カズのことは大切だし、悪いと思うけど......可愛いから」
「ええっ!」
「みんなもそうだけど、俺もなまえの味方だからね。側に居る時は力にならせてよ」
「ありがとうございます......でも、顔が近いです。キスって大切ですからね?唇以外でも簡単にしたらダメですよ」
「ははっ、故意だからね」
「だめですよ?」
「どうして?」
「どうしても......?」
「可愛いね」
「えっ?」
首を傾げると、ギュッと抱きしめられた。
「本当に皆さんは......甘々ですね」
しばらく走ると、目的地に到着する。
タクシーを降りれば、こちらに手を振る人の姿がある。
北門さんは最強で、手を引かれたままそちらに向かってるんだけど......こんなに危機感がなくて大丈夫なんだろうか。
「二人ともお疲れさま!」
明謙くんの元気な声が聞こえて......
「危ない!」
次に聞いた声は切羽詰まった声だった。