第41章 Fake Marriage

「本当にいいの？」

「はい」


後戻りはできない。
ううん、私がしたくない。

私達はホテルの一室に来ていた。



「ついて来てほしいところがあるんです」

あの時......考えるより先に口に出てた。


でも紛れもなくそれは本心だ。
考える間もなく身体が動いたんだから。


「シャワー、一緒に浴びる？」

「あ、浴びません！」

「ふふっ、そんなに慌てなくてもいいのに」


それぞれがシャワーを浴びてベッドに腰掛けた。


「さっきの......聞き間違いじゃないよね？」

「え！？」

「ちゃんと言ってくれたよね？」

「はい」

「もう一回言って？」

「えっ、それは......」


「きゃっ！」

腕を引かれてベッドに組み敷かれた。


「言ってくれたらキスするから言って？」

顔を近づけられると寸前で止められる。


うぅ......。


「最後の可愛いお願いは何？ちゃんとその口から聞かせてよ」




「私を......食べてくれませんか？」


「ふふっ、夢じゃないね。喜んで！」


絡められた手も触れた唇もとても熱い。

私の方がもっと興奮している気がする。


その証拠に心臓は壊れそうなほどうるさい。


今日、死ぬかも......。


そんな事を思うくらいにそれは跳ねていた。

優しく触れるだけのキス。
それは次第に深くなる。


「ちゅっ、......はぁ、ちゅっ」

「はっ......んっ」


『彼を離したくない』そんな思いから自ら舌を絡めていて、


「ちゅっ、んっ......ふぁ......」

唇が離れると銀糸が二人を繋いだ。


「ふふっ、会わないうちに大胆になった？」

「変なこと言わないでください......」

「結婚相手がいるのに......どうして俺にこんなこと頼んだの？」

この時間を守る為には、上手に嘘をつかないといけない。
これから幸せな結婚をすることを、彼の前で事実にしないといけない。

......笑顔でさよならするんだ。


「彼が処女って面倒くさいって......だから、初めてって知ってほしくないんです。一緒に住む時に......初めてじゃダメなんです！」


平気な顔してついた嘘。
誰よりも大好きな彼にこんなに酷い台詞を吐くんだ。


気が緩んだら涙が出そうだった。