【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第41章 Fake Marriage
「これは、どういう状況ですか?」
小雨が降る中、気付けばタクシーに乗っていた。
「見たまんまの状況です!」
「そ、それ!前の私のセリフ盗みましたね!」
「ふふっ、バレちゃった?綺麗だから連れて来ちゃった」
繋いだ右手が更に強く握られて、嬉しいはずなのにその温度に胸が痛い。
「でも、戻らないと騒ぎになってますよね?」
「そうだね」
「増長さんは怒られるイメージないかも」
「確かに.....今までこんなに勝手なことしたことないかも」
「真面目ですもんね。あ、あの時は投げてごめんなさい!」
「ううん、おかしくて笑っちゃったよ。みょうじさんは面白いから」
穏やかな会話の中で握られた右手がずっと痛い。いや、胸が痛いのか。
わけもわからないまままた視界がぼやけた。
「このまま......遠くに逃げちゃおうか?」
優しい目で見つめらると心臓が跳ねる。
「俺一応アイドルしてたし不自由なく暮らしていけると思うんだよね」
おどけたように笑う彼の表情が真剣なものになる。
「ずっと探してた声が聞こえて、心臓が止まるかと思った」
頬に触れられて、そのまま額を合わせられてーー近すぎる距離に心臓が壊れそうだ。
「俺のものにならないなら、あの時本当に止まっちゃったら良かったのに」
その声はひどく震えていて苦しい。
「そんなの嫌です」
紡ぎたかった言葉は喉が焼けるように熱くて、声にならなかった。
「泣かないで?」
抱きしめられて嬉しいのにもっと胸が痛くて、よく知ってる香り、体温、懐かしいな。
彼が好きだ。
自分の気持ちにーー気付いてしまった。
この気持ちはお母さんに会いたい彼の夢を邪魔してしまう。私は弱いから、気持ちを隠して側に居ることは無理だった。
「皆さんに会えて嬉しくて、涙が出ちゃいました」
「偽名だったけど本当に結婚しちゃうの?」
「はい、します。ちょっと訳があって.....変わった結婚式なんです!」
希望は捨てないと苦しいだけだ。
「そっか、みょうじさんの幸せを邪魔する気はないんだ。俺のしてる事は間違ってるね.....戻ろう」
彼が運転手さんに声をかけようとして考える前に身体が動いた。
「みょうじさん......?」
腕を掴まれた彼がこちらを見る。
「最後にお願いを聞いてくれませんか?」