【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第35章 水辺のLabyrinth
短い人生だったな。
まぁ、夜叉丸さんのことは誰かがどうにかしてくれるだろう。
最後は、人任せな私を......お許しください。
自然に身を委ねよう。
そういえば昔、アスファルトから1m下の田んぼに落ちたことがあったな。
抵抗しなかったら無傷だった......よく頭打たなかったよね。
死を覚悟した時、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「なまえ!」
あれ?本当の名前......。
ギュッと抱きしめられると、身体が浮いた。
この声......。
「剛士くん!?」
「剛士くん!?じゃねぇよ!!お前、何してんだよ?」
あれ?彼は地面に足が付いているようだ。
私も試してみる。
「つ、つかない!」
「んなことは、どうでもいいんだよ!」
目の前の彼は、勿論怒っている。
「いや、PV撮影に来てて......気づいたら落ちてました。滝が楽しみでサクサク一人で進んじゃって......撮影陣まだ来てないみたいです。」
「カナヅチなのに、水辺で人から離れんじゃねぇよ!」
「ごめんなさい!助けていただき、ありがとうございます!!」
あれ......?
「剛士くんが居るということは......他の人も居るんですか?」
「ああ。」
「それは、まずいですね!逃げないと!」
「は、何でだよ!?」
「合わせる顔がないですし......今、ここで会うわけにはいきません!!」
「分かった。このまま、下るぞ。溺れて体力奪われたって、撮影時間遅らせてもらえ。今行ったら、アイツらに滝で遭遇する。」
「本当にありがとうございます!夕方からの撮影もあって余裕があるので、お願いしてみます。私がMimiだって、皆さんに言いましたか?隠し事はしんどいですからね。」
「言ってねぇよ。」
「ええっ!」
「つーか、お前が歌得意なのずっと隠してた俺にそれを聞くか?」
「た、確かに......その節はありがとうございました。」
「あ、Mimiちゃん!」
遠くからスタッフさんに名前を呼ばれる。
そちらに大きく手を振った。
気づけば、深かった川も足がつく深さになっている。
「ありがとうございました。」
地面に足が着くって素晴らしい。
「おう、撮影頑張れよ!」
踵を返す彼の腕を思わず掴んだ。