【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第28章 守りたい君の居場所
収録が始まる前の空気は、勿論穏やかなものではない。
この場でつばさちゃんだけが事情を知らない。
この仕事が終われば帝人さんから皆に話すだろう。
その空気に耐えきれずに、つばさちゃんはお茶を淹れに行ってしまった。
「この仕事が終わったら澄空にも話すのか?」
「はい、事務所にも。」
その帝人さんの言葉が痛い。
「まだ、終わりじゃない。」
「俺たちはまだ......帝人を諦めないよ。」
帝人さんと目が合い、困ったように笑ってくれた。
「幼い頃の帝人さんが、精一杯の反抗で掴んだ夢。ここで捨てないでください。これからの帝人さんを見てもらって、お父様に過去の自分の行動が正しかったと証明して下さい。」
私はその泣きそうな頬を両手で包み込んだ。
彼を行かせたくない......。
離れた場所からでも、彼らの姿を見たい。
変わらず応援したい......。
「MooNsのムーンライトーク。」
遂にラジオが始まった。
皆、不安な中でもいつも通りのタイトルコール。
明るく元気に振る舞う。
「まずは、今日のお便りコーナーから。ラジオネーム『弱虫うさぎ』さんから。」
増長さんがそのお便りを丁寧に読み上げる。
「MooNsの皆さん、こんばんは。」
「「こんばんは。」」
「私はデビューからMooNsの大ファンです。今日はかけてほしい曲があって、お便りしました。私にはミュージカル女優になるという夢がありました。」
ミュージカル女優か......。
「それを叶える為大学を中退してブロードウェイに行きたかったんですが、家族に猛反対されているうちに自信が無くなってきて『現実を見ろ。』って。結局......大学を卒業して就職することにします。一度でも夢を持てた記念に、大好きなMooNsの曲『STRTIN' SHINY FANTASY』を聴きたいです。」
それは、今の帝人さんと重なる内容だった。
「そうか......。どう思う?帝人。」
増長さんも同じ気持ちのようだ。