【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第73章 変わったもの、変わらないもの
そちらを見れば増長さんの姿があった。
結婚の話を承諾したこと、彼の中での私はやっぱり『軽い人』だろう。
もはや、婚約者だったという過去も疑わしいんじゃないかな?
人を簡単に信じない彼が、私みたいな人を婚約者には選ぶなんて。
彼からすれば、信じたくもない事実だろうし。
隣を見ればヨーコさんの顔が見えた。
「悪い顔しないでください......」
「してないわよ!」
その考えの見当はつく。
あの日......病院でのイベントは院内イベントだった。
映像こそないものの、私の顔出しや私達が婚約する話は推測なども含まれて大きくなっている。
もはや、事実無根だ。
「お疲れさまです」
何でもないみたいに言えたよね。
顔を見たら色々思い出して、気持ちが溢れそうになる。
今も気持ちがあることを知られたらダメだ。
そう振る舞わないと、彼に罪悪感を感じさせるだろう。
「お疲れさま......皆がごめんね。迷惑をかけるからって言っても聞かないし」
呆れている様子の増長さんは、いつも通りに見える。
私達の間には何もなかった。
キスをしたことも、私が想いを伝えたことも......。
「お疲れさま!」
ヨーコさんは満面の笑みだ。
「お疲れさまです」
「あなた達、遂に結「あああ!」
「本当に結「あああ!」
慌てて二人の間に割り込む私。
今更、変なことを言われるのは困る。
「勘違いしてますよ......ヨーコさんも情報に踊らされてます!!失礼します!!」
増長さんの腕を掴むと、スタジオから飛び出した。
突然のことに、彼はきょとんとしている。
「早く行ってください!ヨーコさんが、悪い顔をしているので......他の人達もすぐに連れてきますね」
再びスタジオに入ると他の皆さんも外に出して、慌てて扉を閉めた。
「ちょっと、みょうじさん!私はまだ聞きたいことが......」
「ダメです!彼らは売れっ子で忙しいので......時間がないんです!!」
スタジオの外に出ようとするヨーコさんを、扉の前で阻む。
雑誌の撮影に来たはずなのに、なんだか他のことで疲れてるような気がする。早く撮影が始まるように祈っていると、突然足元がぐらついた。
「わっ!」
扉が開いて......後ろに倒れる!