【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第72章 Farewell
ドサッと大きな音がして、大量の用紙が目の前のデスクに置かれた。それを持ってきたのは竜持くんだ。
「可愛いでしょ?」
「はい、ピンク色で猫ちゃんが......これ」
婚姻届だ!
オーディション本番は数日後に迫っていた。
「デザインも色々あるよ。13人分、書いてね」
けっこん......結婚!?
「冗談じゃなかったんですね」
「冗談なわけないよ。僕達はアイドルなんだから、冗談であんな事言わないよ」
あの日、お願いしたのは私だ。
彼らは必死にレッスンを積み重ねてくれた......私の相手役を取る為に。
皆の中の誰と結婚しても、絶対に幸せにしてもらえると思う。
不意に増長さんと目があって胸が痛い。
彼も別の人と結婚するんだ。
「気が早いよ。皆もみょうじさんをあまり追い詰めるのは......」
まだ、私の気持ちを気にしてくれるんだ......。
思いに応えられないのなら、本当の優しさはズタズタに傷つけることなのに。
優しくされて『また一緒に居られる日が来る』って、期待するほうがずっと辛い。
『好きなら手を離さないで』
そう言ってくれた。
私の気持ちに応えてくれる彼は、もう居ない。
結局はあの時と同じ選択をするんだ。
「結婚しましょう」
「え......」
増長さんが驚くのも無理はないだろう。
私も咄嗟に口から出た言葉に驚いている。
でも止まらない。
「私の為に努力をしてくれた思いに、この先必ず応えます。選ばれた人を生涯かけて大切にします」
これくらいすればもう彼の元へ引き返すことはない。
他の人と付き合うくらいじゃ、この気持ちは断ち切れないだろう。
仕事仲間のままでも一生思い続けることは自由だった。
でも、やっぱり私には無理なんだ......。
幸せの邪魔をするくらいなら側に居たくない。
私の愛し方はそうなんだ。
「俺はなまえを専業主婦にしたいんだけど」
「俺も男だらけの職場で働かせる気はないよ」
北門さんと愛染さんの言葉に次々と同意する彼ら。
「はい、旦那さんの意見を尊重します。これは貰って帰りますね」
それを抱えると部屋を出た。