【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第72章 Farewell
「ちょっと、待って!」
どうして追いかけて来てくれたんだろう。
「本気なの?」
「勿論です。言い出したのは私ですから」
「でも、俺には簡単に決めすぎって......」
ああ、婚約のことか。
「だって、増長さんは私の事を何も知らないじゃないですか。私はずっと彼らを側で見てきました。皆さん一人一人がとても素敵なことはよく知ってます」
「大事なことを、そんなに簡単に決めるの?」
軽蔑されただろう。
また軽い人だと思われるのかな?
「簡単じゃないですよ。だから、ちゃんとその人だけを一生大切にします」
これは私達の為の正しい選択で、増長さんの幸せを邪魔しない選択になる。
これからこの人は、私以外の人に愛を囁いてその人を抱く。大好きな声で大好きな体温で他の人を愛するんだ。そんなの嫌だな、泣いちゃいそう。
「私の為に......私のことを思うなら頑張らないでください」
嫌だ、頑張ってほしい。
「でも......俺が選ばれないとA&Rだって......」
辞めたくない、ずっと側に居たい。言えない想いを押し殺して彼を見つめる。好きが溢れて......口から溢れてしまいそうだ。でもーー何でもない風に笑えたと思う。
「仕事でも離れないと、結局は顔を合わせる機会がありますからね。嘘の婚約の噂なんて、無い方が増長さんの為です!」
昔の彼には手に取るように分かる様な感情でも、今の彼には分からないだろう。感情を掻き乱されることは、いつだって彼絡みの事だった。
今もなお『気付いて欲しい』と願う気持ちも煩わしい。
どんな顔でも大好きだった。愛しくて、触れたくて、仕方なかった。
笑顔も声もあの頃と変わらない。大好きな『彼』のままなのに......もう『彼』はこの世界の何処にも居ない。
約束したんだから、もう後には引かない。
今、ここで完全に手放すしかない。
前の彼を好きだった私......私達の思い出を。
「増長さんは増長さんの場所で......私とは別の幸せを見つけてください」
今までの私なら、気持ちを伝えないまま離れただろう。
でも彼は本当に大好きで......心から愛した人だったから。
「本当に誰よりも大切で......大好きでした......」
これで良かったんだ。何度も何度も自分に言い聞かせたーー。