愛のカタチ~貴方と見る世界~【ONE PIECE】
第1章 プロローグ
しばらく気を失っていた。
どのくらいなのか。
いつの間にか、クローゼットの中から出され、ベッドに寝かされていた。
「……おか……あ……さま…」
目を開けて、小さく呟く。
「お、目が覚めたようだな。」
「……え。」
男の声に、身体が固まった。なんとか頭を動かし、声がした方へ向くと、そこには、赤い髪、左眼に三本の傷、黒いマントを羽織った隻腕の男、シャンクスが壁に凭れて座っていた。
「……っ!シャンクス!」
リンは飛び起きた。
なぜシャンクスがここに居るのかと。
「おい、気を失ってたんだ、いきなり動くな。」
そう言いながら、シャンクスはリンのベッド脇に移動して座った。
「もっと早く来てくれてたら……」
たちまち、リンの視界は涙で滲んだ。
「悪かった……もう少し早く俺達が来てたら…」
シャンクスは、リンを抱きしめ、自分たちが来るのが遅かったことを謝った。
「…うぐっひぐっ…ジャングズは…わるぐない……!わるいのば……でんりゅうびど!うわぁぁん……!!」
泣きじゃくるリンは必死に言葉を紡いだ。
ヨシヨシ、とシャンクスは黙って彼女の訴えを聞き、そのまま好きなだけ泣かせてやった。
リンは、シャンクスの胸で泣き通した。
ふと気づくと、小さな身体から聞こえていた嗚咽が、聞こえてこなくなった。
シャンクスは、そっと顔を覗き込んだ。
「泣き疲れたか。」
大きくため息をつくと、小さな少女の体を再び寝かせた。
泣きながら眠るリンの髪を優しく撫でてやるシャンクス。
彼は、リンの目元から流れる涙を親指で拭い、部屋を出た。
(今は辛いだろうが…乗り越えろよ、リン!!)
──────
シャンクスは、リリカの遺体の前に座っているベックマンに声をかけた。
「なァ、ベック。俺は、リンを船に乗せようと思ってるんだが。」
「アンタのことだ、そう言うとは思ってたが?」
ベックマンからシャンクスに手渡されたグラスには、リリカへの献杯のためのお酒が注がれた。
「問題は、アイツの意志だろう。」
「母親に似て頑固だろうな。」
シャンクスはリリカ母娘を守る為に、何度も自分の船に乗るように説得したのだが、彼女は頑として首を縦に振ることはなかった。