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愛のカタチ~貴方と見る世界~【ONE PIECE】

第4章 船長の気まぐれ


頭を下げる彼女をローは、見下ろした。

「なんだって、帰る気はねェんだ?また攫われるってのは?どういうことだ?」
ひとまず話せとばかりに、ローはソファーに腰掛けた。他の二人と一匹は少し離れた場所で、ローとリンの話を聞いている。

リンは、その問いに答えるべく顔を上げ、ローの目をしっかり見て話し始めた。

「あの店の店主に、売られたのです……店主は住んでいる家の場所も知っています。だから、戻れば、きっと探し出してまた私を売ろうと……そしたらきっとまた…」
そう言って言葉に詰まる彼女を、眉間に寄せた皺をより深くして見つめ返した。

「金のために、か。」

「…はい…」

「お前、親はいねェのか?」

「六年前に…母を天竜人に殺されて…父は元からいません…」

彼女の美しい大きな瞳に溜まった涙。それを零すまいと必死に堪え、唇を噛み締めているリン。

「…そうか……」
と、ローは深い溜息を吐いて、リンの傷を指さした。

「まず、その傷の手当をする。オレは医者だ、診察室に後で来い。ベポ、船内を案内しつつ、連れて来い。」

ベポに指示を出し、ローは診察室へと向かっていった。ローは向かいながら思った。なぜ、彼女にあんなこと聞いてしまったのだろうと。一週間しかいないだろうに、聞く必要あったのか?かえって辛いことを思い出させてしまったよな、と。でも、船に乗せるからには船長として知っておくべき必要なことだ、と自分に無理やり言い聞かせ、これでいいと納得させた。

白い絹のような滑らかな肌が、捕えられた時に付けられた傷と、逃げる時に付いた傷とで痛々しそうだった。
外傷よりも、内面の心の傷の方が当たり前に深い。
(一週間じゃ、心の傷は治せねェな…)



シャチとペンギンは、ローがなんの疑いもなく、彼女を助けたことと、船に乗せたことに驚いていた。
だって、彼は信用ならない人間を簡単に助けたり船に乗せるような人じゃないからだ。
三日前に助けたとはいっても、ほんの少し話した程度。少しの疑いも持たないなんてと、いままでのローを知っている二人からすれば、ローの考えや行動が理解出来ずにいた。

「まぁでも、キャプテン……根は優しいからな。」

「気まぐれなとこもあるしな…」

彼は、世間では死の外科医と恐れられていても、仲間を大切に思う優しい人なのだ。
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