愛のカタチ~貴方と見る世界~【ONE PIECE】
第2章 出会いは突然に
「…ジョーカー…」
ローは小さく呟きながら、ギュッとグラスを握った。
そんな客たちの会話を聞いていると、奥から怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんだと!俺との酒が飲めねぇって言うのか!」
その声の方へ向くと、客の海賊の一人が、酔って店員に絡んでいるところだった。
絡まれていたのは、先程ローのテーブルにお酒を運んできた店員の女、リンだった。
「すみません、お客様が他にもいらっしゃいます。静かにしてもらえませんか?」
とリンは海賊の男に頭を下げた。
すると、その海賊は彼女の態度が気に入らなかったのか、
お前がうるせぇ!と言って彼女の髪を掴み、殴り飛ばした。
「…ッ!」
ガッシャーン!という音と共に彼女は、ローたちのテーブルのそばまで飛んできた。
「うわぁぁッ、さっきの女の子が飛んできた!」
ビックリして、ベポはリンのそばに駆け寄り、優しく助け起こした。
「大丈夫?唇切れて、血が出てるよ…?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます…」
そう言いながらリンはローたちに笑顔を向けた。
向けられた彼女の笑顔の瞳の色にローは戸惑った。なぜなら、その瞳の色は、初めて見た彼女の瞳の色とは違っていたから。
(橙色?!)
リンは自分を殴った海賊の元に再び近づき頭を下げた。
「先程は申し訳ありませんでした。」
「絡まれていたのは彼女の方なのに、なんで謝ってんだ!しかも殴られたのに!」
黙って様子を見ていたシャチが、ドン!と叩き割るかのようにグラスを置いた。明らかにシャチは怒っていた。
「…で、ねぇちゃん、俺との酒はどうなんだ!飲めんのか、飲めねぇのか、どっちなんだ!」
海賊は先程より大きな声で彼女に執拗に絡んでいる。今度はリンの胸ぐらを掴んでいた。
か弱い女性が絡まれているというのに周りの者達は見て見ぬふりをしている。
「キャプテン…おれ、助けてきていい?あの子。」
ベポは見ていられなかった。なんで、店主が止めないのかも不思議だった。
「…放っておけ。下手にクビ突っ込んで騒ぎ起こすと面倒だ。関わるな。」
「でも…見てられないよ!見て見ぬふりなんてできない!」
ベポはつぶらな丸い瞳で、ローに必死に訴える。だって、我らがキャプテンが口ではそんなことを言いながらも、実は優しい人だということを知っているから。