第38章 “またね” ※
夜よりも暗く深い闇に足を踏み入れた。
けれど不思議と怖さはあまりなかった。
最後の最後まで、あなたがしっかり手を握っていてくれたから?
それとも泣かずに、
“またね”
って言い合うことができたから?
私は旅に出るの。
次にあなたと巡り会うまでの長い長い旅へ。
だから“さようなら”じゃなく“またね”なの。
あなたが最後に言ってくれた我儘、とてもうれしかった。
毎朝起きたら太陽におはようと言う前に、今日のあなたの無事を祈るわ。
毎晩寝る前には月を見上げて、あなたにとって明日も素晴らしい日になりますようにと祈るわ。
忘れない。絶対絶対忘れない。
怒るとちょっと怖い顔も、柔い黒髪も。
誰よりも強く逞しく、優しい背中も。
幾度となく飛び込んだ胸も、抱きしめてくれた腕も、その時聞いた力強い鼓動も。
私より少し低めのあなたの体温も、あなたの匂いも。
“エマ”
何度も私を呼んでくれた声も。そして、
あなたが私を“愛してくれている”という想いを。
私があなたを“愛している”という気持ちを。
あなたの身体も、心も、魂すらも全部抱きしめて、記憶の宝箱へ大切にしまう。
そしてその箱を毎日開けて、ちゃんと思い出すから。
何がなんでも忘れることがないように、毎日ずっと。
また会える、その日まで精一杯生きて、生きよう。
あなたはあなたの人生を。
私は私の人生を。
リヴァイさん。
ずっとずっと、愛しています。