第38章 “またね” ※
視線が絡み合い、どちらからともなく唇を寄せた。
熱く溶けてしまうような口付けを交わしながら、首の後ろに腕が絡みついた。逞しさに包まれる。
エマも両腕でリヴァイの身体を引き寄せた。
汗ばんだ胸が汗ばんだ胸板に押し潰されて密着する。
硬い筋肉で覆われた肉体はずっしりと重い。でもその重みが嬉しい。
このまま重なった部分全てが溶けて混ざり合って、ひとつになればいいのに。
再び律動が始まればすぐに呼吸は苦しくなった。
それでも舌を抜きたくはなくて、唇を離してしまいたくなくて、貪り合い続ける。
重なった唇の隙間から漏れる湿った吐息は、何もエマのものだけではなかった。
それが、エマを高みへと押し上げる。
また果ててしまう。
言うことをきかない体。腰から下が激しく痙攣し始めた。
何も考えられなくなって無我夢中でしがみつくと、それ以上の力で抱きしめられる。
恐れていた怖さはない。そこにあるのは、無限の愛だけだ。
好き……大好き。
その力強い腕も、身体を貫く熱も、熱っぽい瞳も、愛溢れる口付けをくれる唇も。
あなたを形作る一つ一つの細胞までもが愛おしい。
溢れる愛で苦しい。だから私はあなたに伝えるの。
いくら伝えたって足りないけれど、それでも。
「エマ…ッ愛してる」
「愛してるっ……愛してる、リヴァイさんっ」
たった五文字を伝え続けたいだけ。それだけ。
なのにどうしてそれが叶わくなってしまうの…
〝明けない夜はない〟
例えば、今がとても辛い夜だとしたら、この言葉は励みになっただろうか。
エマは熱に浮かされながら、ぼんやり思う。
そして同時にこうも思った。
明けなくていい。
一生、朝なんて来なければ。
もしくはこの暗がりに紛れて、二人で消えてしまえたらいいのに。
誰にも見つからない、どこか遠い場所へ。
“リヴァイさん”
名前を呼ばれる以上に名前を呼んだ。
愛しいその名を一文字一文字、刻み込む。
柔い唇の感触も、中で轟く熱さも、匂いも、声も、肌の温もりも、全部、すべて。
どうかこの夜が、ずっと明けませんように。
そう 祈りながら。