第38章 “またね” ※
「あ゛っ——…!!」
「くっ……はぁっ」
激しい絶頂を迎えたエマの中はリヴァイを容赦なく締め上げる。
絞り取られそうになるのをどうにかやり過ごし、リヴァイは深い悦に呑まれたエマを見下ろした。
睫毛を震わせ、半開きの唇からは声にならない声が零れている。躰はビクンビクンと不規則に痙攣していた。
リヴァイは上下する胸に顔をうずめた。
「んあっ!」
歯を立てた部分をきつく吸い、印を刻む。
「あっ!んん!」
エマの躰に、己の存在を刻み込むように。
場所を変え、何度も同じように吸いつく。
甘く喘ぎ、中はうねりながらリヴァイに絡みついた。
エマも喜んでいる。
リヴァイは夢中で噛んでは舐め、吸い上げた。
——肉親、友、仲間、部下。
大切なものは散々失ってきた。
失うことに慣れてしまいそうなくらい、たくさんだ。
実際は慣れることなんかない。
けれど失う度に、感情を抑制するのだけは上手くなって。
—いつも仏頂面で一体何を考えているのやら—
—兵長は、仲間の死をなんとも思わないのですか!—
—完全無欠の英雄、リヴァイ兵長だ—
涙の出し方も、とうの昔に忘れた。
「リヴァイ…さん?」
エマ。
お前が狂おしいほどに愛おしい。
俺たちは何故離れなければいけない?
何故…
「……くな」
「…え?」
「行くな……エマ」
潤んだ目をまん丸に見開いた、愛しい顔。
リヴァイは片肘をつき、彼女を自分の躰ですっぽり囲むようように覆う。空いた手で頬を包んだ。
「どこにも行くな……」
生ぬるい雫が頬に添えた手を伝う。彼女は泣いた。
唇を震わすエマ。親指で何度も拭うけれど、涙は次から次へと溢れ出る。
リヴァイはエマを抱きしめた。
例えば、このまま肋骨を折ってしまえば、それが治るうちはここにいてくれるだとか。
そうしたら今度は足の骨を折って…なんて馬鹿なことを考えて、虚しくなり、余計に胸の苦しさは増す。
慣れてしまいそうなほど、失ってきたというのに…
だが、こんなに苦しくてもやはり涙は出なくて。
エマのように感情のまま泣くことができたら、この苦しさから少しは開放されるのだろうか。