第36章 A ray of light
一度溢れた感情はダムが決壊したみたいに止めることができなくなって、エマは幼い子供のように泣き叫び続ける。
“ いくらでも受け止めてやる。全部吐き出せ”
リヴァイの一言で、抑え込んでいた痛苦が爆発した。
エマは何も話すことが出来なかった。ハンジにもリヴァイにも。
これ以上心配をかけたくなかったし、それにもし苦しいと訴えたら、感情をぶつけたら、自分がどうなってしまうのか分からなくて、怖かったのだ。
「ああああああ゛あ゛!!」
けれど、苦痛を留めておくほうが無理だったかもしれない。
胸は張り裂けそうに痛んで、辛くて苦しくてたまらないけれど、でもそれだけじゃなかった。
包まれた胸の中はこんなにもあたたかい。
髪を撫でてくれる手のひらは、こんなにも優しい。
バラバラに砕けてしまいそうな心をそっと包み込んで、闇に飲まれそうだった自分を照らしてくれたのは、他でもないリヴァイだ。
エマはリヴァイの背中にきつくしがみついた。もう片時も離してほしくなかったし、離れたくなかった。
何もかも忘れて、ただずっとこうしていたい。
ものすごく都合が良く勝手な話だ。けれどエマは本気でそう思っていた。
それがもはや叶わぬことであるのに気が付いていても、気付かないふりをして、知らないふりをして、現実から目を逸らしてしまいたい。
そうでもして縋りついていなければ、もう、自分を保てなくなりそうで。
身も心もボロボロの少女に降り注ぐ一筋の光。
その光にこのまま永遠に照らされ続けたいと、そう願うのが愚かなことであったとしても。
今だけはどうか、縋らせて……