第34章 失踪
「最近気になることがあるんだけど!」
正午過ぎの食堂は、朝から厳しい訓練を終えた兵士達が続々と腹ごしらえに訪れ、活気にあふれていた。
エマの目の前に座るペトラは少し興奮した様子ででこちらを凝視している。エマは、あぁこれはまたリヴァイさん関連の話かなと予想した。
「ん?なに?」
「そのペンダントってもしかして…兵長から?」
「う、うん。そう…」
やはり予想的中だ。ならばしれっと答えればいいものを、いざ聞かれると恥じらいが生まれぎこちない返事になってしまう。
しかしそんなの気にも止めない様子でペトラは心底嬉しそうな顔をした。
「やっぱり!このところ毎日してるから絶対そうだと思ってたのよ!とっても素敵ね。似合ってるわよ!」
人懐っこい笑顔は屈託もなくそう言う。恥ずかしいしむず痒いけれどペトラの気持ちは素直に嬉しくて、エマは照れながらも礼を言った。
「ありがとう。これ…兵長が私のために選んでくれたってだけで本当に嬉しくて…へへ」
「フフフ、そうよね!あぁ見えて兵長、すごく神経質だし相当悩んだはずよ、きっと。」
「うん、私もそう思う…だから一生大事にする。」
幸せそうな笑みを零しながら、胸元で輝くそれを大事そうに握りしめるエマを見て、ペトラも柔く微笑んだ。
リヴァイにプレゼントの相談をされてから、ペトラはずっと気になっていたのだ。もちろんリヴァイからいちいち報告などないし、何を選んだのか、無事に渡せたのだろうかと。
粗暴で無愛想な上官が、真剣に思い悩んで眉間に皺を寄せていたのを思い出すと、なぜだか温かな気持ちになる。
…よかったわね、エマ。
「私、一生エマと兵長のこと応援してるから!」
「それを言うなら私だって、ペトラと彼氏さんのこともずっと応援してるよ!」
テーブルを挟んで同じような顔をして笑い合う。
二人はいつしか、互いの恋を応援し合い、支え合う仲に発展していたのだ。