第33章 決意の裏側
昨日の晴天から一転、今日は朝から分厚い雲が広がっていた。
エマ達が帰ってくるまで持てばいいが…
彼方まで続く灰色を見つめながら茶を啜ると、扉の外が何やら騒がしいことに気がつく。
ドタドタドタドタ一
バンッ!!!
「エルヴィン大変だ!!」
ぶち破りそうな勢いでドアを開け叫んだのはハンジだった。
ハンジの一大事な様子に特段驚きもせず、エルヴィンは山積みにされた資料の隣にカップを置くと静かに碧眼を向けた。
「どうしたハンジ」
「マズいことになったんだよ…とりあえず来て!」
「用件があるならここで」
「あーんもう!ここでああだこうだ説明するより見た方が早いから!早く!」
息を荒げ深刻そうな顔で一緒に来いと言うハンジ。
ハンジが無遠慮に勢いのまま入ってくるのはよくある事だから最初はそこまで気に止めていなかったが、彼女の表情から今回は本当に何やらよくない事情が絡んでいそうだと分かった。
「分かった」
見た方が早いと言うなら行くしかない。
エルヴィンはこの場で理由を聞くのはやめ素直に腰を上げた。
ハンジに先導され幹部棟の階段を降りて廊下を歩く。
と言っても彼女はだいぶ焦っていて 話しもせず競歩のように歩みを進めるので、エルヴィンも黙ったまま忙しく右左と足を出した。
しかし外へ出て少し歩くと、おおよそどこへ行くのかピンときた。
「連れてきたよ!」
現場に着くとミケとモブリットがいて、モブリットはエルヴィンに不安げな顔を寄越した。
ミケはハンジの声にチラとこちらを向いてから目線は再び下を向いた。そこを見ろと言うことか。
エルヴィンは二人が何を見ているのかも大方検討がついていたが、“そこ”が一体どうしたと言うのか。
ミケの隣に立ち同じように下を向く。そして飛び込んできた光景にエルヴィンは目を見開いた。
「これは…」