第32章 北の地にて ※
足の指は丸まり、背筋はシーツから浮いた。
視界は白んで何も考えられなくなってくる。
全ての神経が結合部に注がれ、猛々しい陰茎が収まる膣以外はまるで存在していないようにすら感じる。
ズチュッ ズチュッ ズチュッ ズチュッ
一あ、あぁ…もう、くる、きちゃう…だめ…
「…っ、エマ」
名前を呼ぶ声がして目を開けるまもなく最奥に打ち付けられ、とうとうエマの目の前は真っ白になった。
「!!っはあ゛っ!あぁ゛ぁ゛ぁぁ!!」
「……ック!」
搾り取りたいとうねる胎内から勢いよく抜去された陰茎は、エマの腹の上でドクドクと脈打った。
下を向くリヴァイの綺麗なつむじを眺めたまま、エマは忙しなく胸を上下させていた。身体から切り離された意識がゆっくりと戻ってくる。
少ししてサラサラと前髪が揺れ、ゆっくりこちらを向いたリヴァイの眼を見てエマはハッとした。
「リヴァイさん…」
「………まだだ」
「っ!!」
半ば睨むようにエマを見据える瞳の奥は、まだメラメラと情欲の炎を燃えたぎらせていて、その瞳と短い一言でエマは全てを理解する。
「全然足りねぇ」
獣性的な視線が突き刺さり、エマは蛇に睨まれた蛙のように動けない。
「無理とは言わせねぇからな…」
ドクンと心臓が鳴る。でもそれは警戒したからでも、拒絶ようとしたからでもない。
自身の心が期待して喜んでいるのだ。
私だってもっと…リヴァイさんがもっともっと、
「……欲しいよ…?」
飢えた獣のような目がぽっかりと丸みを帯びた。
「私だって、全然足りない…もっと欲しい…」
どうしてだろう。あんなに口にするのが恥ずかしいと思っていた言葉が止まらない。
言いたい、伝えたい。
「今日は…だめになっちゃうまで、愛してください…」
丸みを帯びた目が更に丸くなる。
そのすぐあと瞳は満足げに細まって、エマは疼いた。
「…了解だ。後で後悔するなよ。」
弧を描く唇は意地悪そうでなものではなく、素直な喜びを表していた。
ぐちゃぐちゃになってもいい
壊れちゃってもいい
いっぱい貴方の愛を、ください
エマは破顔して、手を伸ばした。