第32章 北の地にて ※
リヴァイは噛み付くようなキスをした。
足りない酸素を補給しようと離れる頭を押さえ、喉奥から溢れる嬌声を余すことなく飲み込む。
苦悶の表情を浮かべながらもエマはリヴァイの指遣いに翻弄されていた。
いい所だけを狙われ続け、さっき浴室で一度果てた身体なんて簡単に昇りつめてしまう。
キスをされているが自分から舌を絡めにいくことなどできず、ただ受け入れるので精一杯。というか、強制的に受け入れさせられている、の方が近いかもしれない。
「ん゛ー!!ふ、っんぅ!」
エマはあまりの苦しさにリヴァイの胸を押した。
酸素がない。鼻で息しているはずなのに需要と供給が全くあっていない。
しかし弱すぎる腕力では話にならなかった。
リヴァイからすればエマの手は上品に添えられているだけと言っていいくらいだ。
「…ふ、ん…っん゛ん゛っ!!ん゛っ!!」
酸欠で霞む意識は膣壁を引っ掻かれるたびに呼び戻された。
苦しささえも快感を手助けしてきて、エマはリヴァイに与えられる甘美な悦に溺れていくしか術がない。
……もう……だめ………
溶けた脳が考えることは実に単純明快だった。
苦しい…助けて……苦しい……
はやく……早くイかせて…はやく!
あぁ、くる…くるっ!あぁ…もっとして、もっと…!!
-ズチュッ!
「ん゛あ゛っ!!……っ?!」
目前まで迫った恍惚に身を預けた刹那、まさかというタイミングでリヴァイの動きが止まった。指は深く埋められたまま一ミリも動かない。
ゆっくり唇が離れ、二人を繋いでいた糸が滴となり胸を汚す。
今まさに掴もうとした絶頂が遠ざけられてしまった。
極限まで昂められた絶頂感は行き場を失い、涙となって目尻に溜まっていく。
「はぁっ、はぁっ、なん、で……」
エマは我も忘れて縋った。
突き放そうとした胸にしがみついて見上げると、真顔のリヴァイと目があった。
「期待外れで残念だったな、エマ……だがこれくらいはお前も知ってるだろ?たっぷりお預けを食らった後のご馳走は相当美味いもんだ…」
「ご、ちそう…?」
「そうだ」
一体なんの話をしているのか、思考がほぼ機能していないエマには理解できない。
そんなことはいいから、髪を梳かしているその手で、導いてよー