第32章 北の地にて ※
骨張った指が小さな石をころんと弾く。
「似合ってる」
「リヴァイさん……」
胸に乗った小さな重みに詰まっているのは、リヴァイの大きな愛だ。
エマはその重みを大切に噛み締めた。
ペンダントを見つめそれからエマを見たリヴァイはとても優しい表情をしていて、エマの胸は切なく締め付けられる。
煌めきにそっとキスを落とした唇は横へずれて鎖骨をなぞり、緩やかな丘へと辿り着いた。
「ん……」
滑らかな丘を登り頂点へくると、舌先が頂の周りを這う。
反対側は乳房を包み込んで柔く揉まれた。
優しく丁寧な動き。
エマはなんとなく、いつものリヴァイとは違うと思った。
別にいつもが優しくないわけではないし、丁寧じゃないわけでもない。もちろんちゃんと愛も感じている。
でも普段はもっとエマの劣情を直接刺激するような官能的な動きだけれど、今はただただ優しいのだ。
「リヴァイさん…」
双丘に埋めていた頭が少し上がる。
その上目遣いひとつでさえエマは鼓動を高鳴らせ、昂ぶってしまう。
「……好きです」
見上げる瞳は僅かに見開かれ、驚いているようだった。
その反応はいっそうエマの胸を焦がし、溢れる想いそのまま声にした。
「リヴァイさん…好き……私のことも…好きでいてくれてありがとう…」
整った黒髪に手を伸ばす。
柔らかな猫っ毛が指を通り抜ける度、愛おしさが増していく。
いつもされているみたいに優しく撫でて、頭部を両腕で包み込んだ。
こんな風にするのは初めてだが、照れくさいとかそんな気持ちは一切無くて、ただあるのは愛おしいという思いだけ。
「…どうした 急に」
「わかんない……でもこうせずにはいられなくて…私いま、幸せすぎてどうにかなっちゃいそうです……」
腕の中で動かないリヴァイに素直な気持ちを吐露する。
ただ伝えたくて仕方がない、それだけだった。
頭が少し動いたので腕を解放すると、両手にリヴァイの手が重なりそのまま顔の横へ沈められた。
見上げれば、真上にあるのは悩ましげな表情。
「お前といると思い通りにいかねぇことばかりだな…」
ぽつりと呟かれた一言に、エマはハッとした。