第32章 北の地にて ※
緩く上下する二つの手。リヴァイの手は添えられるように重なりゆっくり動作を先導している。
それを見ていると段々自身の中に変な感情が芽生え始めた。
“俺は気持ちいいぞ…エマ”
…例えばこの手をもう少し強く握ってみたら…リヴァイさんはもっと気持ち良くなってくれるのかな…
純粋に、リヴァイにもっと気持ち良くなって欲しいと思った。
それがどちらの意味なのかはもう言うまでもない。
包む手に少し力を入れゆっくり上下に擦ってみた。
リヴァイの昂る熱が掌全体により一層伝わってくる。
「……っ、」
頭上からいつもとは違う息遣いが聞こえ、見上げると眉を寄せる恋人の顔があってエマは慌てて手を退けた。
「すみません!痛かったですか…?」
やってしまった。変な気分になってつい勝手なことをしてしまった。
しかしリヴァイからはエマの予想に反した返事が返ってきた。
「馬鹿…逆だ」
リヴァイの細長い指先が顎に添えられ、グイッと真上に近い角度で上を向かされる。
エマを真っ直ぐ捉える瞳は切なげで、でも熱っぽく絡みついてくる。
「リヴァイ、さん…」
「さっきから随分と大胆なことしてくれるじゃねぇか…ベッドまで取っておこうと思ったがもうやめだ。」
唇が触れそうな距離で低く囁かれる声に、エマの中心はまたジュクンと大きく疼いた。
「てめぇのせいだ…エマ。しっかり責任とってもらわなきゃな…」
「なに…んぅっ?!」
2センチにも満たない距離はリヴァイが少し顔を寄せればゼロになる。
熱を帯びた唇がエマに噛み付くようなキスを注いだ。
腰を強く引き寄せられ上から抱きすくめるようにされて、エマは背中を弓のようにしならせながらも深い口付けに応えようとした。がしかし。
「…んっ、…あ!!」
リヴァイの指が閉じられた内腿を割り入り、その奥の秘密の花園へと滑り込むとエマは思わず口を離してしまった。
だが ぬる、と一度そこを掠めた指はすぐに退きエマの顔の前にかざされる。
「オイオイ、なんだこのザマは。」
エマは真ん丸な目を見開いた。
ゆっくり開かれた中指と人差し指を繋いでいるのは、紛れもなく自身から溢れた蜜だった。