第30章 裏切り
この唇に、他の男が…
分かってはいたがエマの口から事実を聞くと感情はもう抑えられなくて、リヴァイは乱暴にエマの唇を奪った。
「っ…リヴァ…」
「どんな風にされた」
「どんなって…んんっ、」
エマが質問の意味を理解する前に、唇を割り差し込まれるリヴァイの舌。
「ふ……っ…」
「アイツにもこうされたかって聞いてんだ。」
「っされてない…!」
「そうか…なら次はここだ。」
スッと肌にあたる指先。
はだけたシャツから覗く鎖骨をリヴァイの指がなぞった。
「どこを触られた?」
エマを見るリヴァイの目は激しい嫉妬心に満ちていて、素直に答えるのが恥ずかしいなどとは言ってられない。
「……胸元を少し…でっでも大丈夫です!ちょっと触られただけだから…っあ!」
エマの返答に返事はなく、代わりにざらついた感触が肌を這う。
「ちょっ…!大丈夫ですって、本当に少しだけですから…!」
「ダメだ。少しだけだろうがアイツがお前に触れたことに変わりない。大人しくしてろ…アイツの痕跡はひとつ残らず俺が消してやる。」
「っ…もう、リヴァイさん、あ…」
こんなことまでしなくてももう十分だと言いたいけれど、口にしたら怒られそうだ。
それに自分のせいでリヴァイにここまで心配をかけてしまったのだから反論する資格もない。
そして何よりエマ自身…リヴァイにこうされるのが嫌なわけじゃない。
「お前に触れていいのは俺だけだ。」
生温かさが肌をなぞり、時折音を立てて吸い付く感触。
チリ、と走る痛みがエマを大きく安堵させ、同時に別の感情も芽生えさせた。
「…してください」
消え入りそうな声。
見上げたリヴァイと目が合う前に顔を背け、湧き上がった思いをもう一度口にした。
「消してください…感覚も記憶も全部、リヴァイさんだけにして…」
一瞬の間の後、ハッと短い笑い声。
「いつからそんなに俺を煽るのが上手くなったんだよ。」
真っ赤な頬を手のひらが包み込み、ゆっくり視線が交わる。
優しく、そして悩ましげな瞳。
「これ以上は我慢してやろうと思ってたってのに…知らねぇぞ」
「我慢、しないで…」
少し冷えた手にそっと自身の手を重ね、エマはコクリと頷いた。