第28章 長い夜 ※
スプリングの軋む音に、肌がぶつかり合う音と粘着質な水音。
乱れる呼吸音に、律動と同じリズムで鳴る嬌声。
この部屋を支配するそれらの音が刻一刻と激しさを増していき、その最後にエマの果てる声がして、後は乱れた呼吸音を残すのみとなった。
臍とその周りに飛び散った白濁液をリヴァイは綺麗に拭き取ると床へタオルを投げ捨て、不規則に胸を上下させているエマの横へ寝転びその身体を引き寄せた。
頭をゆっくり撫でて髪に二、三度キスをする。
「リヴァイさん…」
そしてこっちを向いた唇にもう一度。
リップ音立ててながら名残惜しく離すと目の前にはふわりと微笑む少女がいて、つられて頬が緩まった。
まだ少し火照ったままのエマを、体全体で包み込む。
首元に顔を埋めればほのかに甘い、愛しい香りがする。
胸がじんと温かくて幸せで、いつまでもこうしていたい。
「好きだ…」
無意識に出たのは心の声だ。
首元からゆっくり離れるとはにかみ顔のエマが見えた。
リヴァイは大きな丸い瞳に自分を映して、今度は自分の意思で囁いた。
「エマ、愛してる。」
「私も…リヴァイさんのこと、愛してる。」
照れくさそうに、でも真っ直ぐ目を見て言うエマに綻んだ。
またギュッと抱きしめて、離れて、唇を合わせる。
「フフッ、こんなにいっぱいキスしてたら、明日唇腫れちゃいそうですね。」
「ならもうやめておくか?」
「ん、やだ…」
―チュッ
「まぁ止めると言っても構わずするけどな。」
「なら聞かないでくださいよー」
「もし腫れたら明日はマスク付けて一日掃除でもしておけばいい。」
「フフ、じゃあ指導お願いしますね。」
「言っておくが掃除に関しては手加減しねぇぞ?」
「それは分かってますよ!厳しいご指導よろしくお願いします!兵長!」
「…久しぶりにその呼び名で呼ばれたな。」
「フフ、確かに二人きりの時に呼ぶのは久しぶりですね。でもたまにはんっ…ん、う…」
楽しそうに笑って話す口がまた塞がれる。
何度キスしても、何度抱きしめ合っても、何度囁き合っても足りない。
気怠い身体をベッドに預け瞼が降りるまで、二人は何度も繰り返し愛を確かめ合った。