第28章 長い夜 ※
「随分とアイツの肩を持ちたがるじゃねぇか。」
「そんなつもりで言ったわけじゃ!」
「まぁお前を疑ってるわけじゃない。ただ…」
そこまで言いかけるとリヴァイはエマの顔にぐっと顔を近づけ、低くドスのきいた声で囁くのだった。
「あんなもん見せられちゃこっちは全くもって面白くねぇんだよ。」
「……っ」
「エマ。俺が嫉妬深いのは知ってるよな?」
髪を指先に巻き付けて弄び、その指が頬を伝ってゆっくり唇をなぞる。
「他の野郎がお前と二人きりで喋ることさえ気にくわねぇってのに、よりによってエルヴィンに触られちまうなんて余計気にくわねぇんだよ。」
エマの腕を掴みながら物憂げな視線を送るエルヴィンの横顔が、再生された。
エルヴィンもエマの事が好きだったのだ。
今はどうか分からないが、そういう過去があるとこちらの警戒心が強くなるのは当然。
二人きりで意味深にエマの腕を掴んでいたことが激しく気に入らないし、どす黒い嫉妬心だってそれはそれはズクズクと湧き上がってしまう。
そのせいでさっきは、エマを無理やりこの部屋に連れ込み感情のままに唇を奪ってしまったのだ。
屋敷から帰ったらすぐエマに逢いたいと思っていたのに、着いて早々あんなものを見せられてしまい嫉妬心をどうにも抑えることが出来なかったのだ…
「なぁエマよ……さっき俺の心と体は全部お前のもんだと言ったが…逆にお前の心と体は全て俺のものだということも理解してるよな?」
唇の表面を指がなぞる度、掠れた声が鼓膜を揺らす度、エマの身体はその熱を少しずつ確実に燻らせていく。
「分かってます…」
「お前が好きで、愛しているのは誰だ?」
「そんなのっ…リヴァイさん以外いるわけないじゃないですか…」
答えるのが恥ずかしくなるような聞き方だ。
エマは照れ隠しするように少しツンケンと返事をしてしまったが、リヴァイは満足そうに口角を軽く上げた。
「そうか…俺もお前を愛している。」
「っ!」
すぐに返ってきた直球すぎる言葉にエマの心臓は射抜かれてしまった。
「だが心配は尽きないな。」
「え?」