第26章 兵長ご満足プラン ※
柱にかかっている時計を横目で見る。
10時か…
風呂に行ってる間に用意されていた布団。
そこに横たわる女の前髪をそっと撫でた。
あどけない顔をして規則正しい寝息を立てている。
こうして見ると、さっきまで喘ぎ乱れていた女とは別人のようだ。
本当に色んな顔を見せやがる…
薄く開いた桃色の唇にキスをして、唇の輪郭を薬指でゆっくりなぞった。
「ん…」
その唇から小さな音が漏れて、微かに眉が動く。
「……へいちょ…?」
「起きたか」
「あれ…私……」
トロンとした目で見てくる。
どうやらすぐに理解が追いつかないらしい。
「風呂の中で失神するなんて前代未聞だな。」
「…!!」
俺の言葉にがばっと起き上がり、丸い目を更に丸くしてぱちくりさせている。
間抜けな面につい鼻から笑いが漏れた。
「さすがに覚えてないってことねぇよな?」
「……お、覚えてます…」
「最後は悲鳴みたいに啼き喚きやがって、口塞いでたのもまるで意味なかったな。」
まぁ俺も途中から声を気にする余裕なんてなかったんだが。
「う…すみません…」
「まぁいい。素直に善がるところも今までにないくらい見せてもらったしな。俺は大いに満足してる。」
そう言えば今度は瞬時に頬を染め、両手で顔を覆って恥ずかしそうに俯いた。
「うぅ…恥ずかしいのであんまり思い出させないでくださ」
「エマ」
嘆くエマを制止するように名を呼び、泣きそうな顔をしているその唇を奪う。
「愛してる。」
「私も…愛してます。」
彼女を見据えて愛を伝えれば、はにかみながらもはっきりと返してくれる。
後頭部をそっと支えながら羽のような布団の上へ横たわらせると、エマは丸い目をパチパチさせながら見上げた。
「兵長…?」
「…はぁ」
今日は本当にどうかしてる。求めても求めても足りない。
「へい、ちょう…?」
エマのことを、俺で埋め尽くしてやりたい。
少しの酸素と俺以外、もう何も与えたくない。
「どこまで夢中にさせりゃ気が済むんだよ…てめぇは」
「兵長!きゃぁっ!」
苦労して着替えさせたのに無意味だったな…
ぼんやりそう考えながらも躊躇いなく浴衣を脱がし、暴れる熱をエマの中に埋め込んだ。