第25章 神隠し
「着替えたぞ。」
中から声がしたのでドアを開ける。
「あ、よかったぁ!やっぱりちょうどいいですね。」
「裾はいいが、腹はだいぶ絞った。」
「あっ、フフフッ。すみません、私の父、ちょっとぽっちゃりだから…」
上の服を捲り上げて見せられたウエスト部分は、ギュギュギュッと布がたぐり寄せられて窮屈そうにリヴァイの腹に巻きついていた。
「部屋着みたいな服しか用意できなくてすみません。後でちゃんとした服買いに行きましょうね。」
几帳面に畳まれた兵服をクローゼットにしまいながら、ひとまず父親の部屋着に身を包んだリヴァイを見た。
「別に格好はどうだっていいが、外を歩くならなるべく周りに溶け込める服装の方がいい。ただここの奴らがどんな格好してるか分からねぇし、その辺はお前に任せる。」
「了解しました!それにしても、ジャージ姿も似合いますね。」
「そうか?」
うん…似合う。
お父さんには申し訳ないけど、部屋着には思えないくらいおしゃれに見えるよ…
上下とも黒の、腕と足の外側にそれぞれ三本の白いラインが入った某有名スポーツメーカーのなんの変哲もないジャージなのだが、引き締まった体のリヴァイが着ればそれだけで洒落た着こなしに見えてしまうから不思議だ。
それに兵服でないリヴァイは、なんというか凄く新鮮で…良い。とても良い。
「そうですそうです!兵長顔かっこいいし体も引き締まってるので、どんな格好でも着こなせちゃいそうです。」
「ほう…なかなか、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。」
何気なく発した言葉につっかかられて急に恥ずかしくなってしまったが、常日頃からそう思っているのは紛れもない事実だ。
もう恋人同士なのだからたまには素直になってみても…
不意にそんな思いが湧いて、照れながらも小さな声で呟いてみた。
「も…もちろんです。兵長…すごくかっこいいです……好きです。
?!キャッ!」
思いの丈を言い終えた直後体がフワリと浮いて何事かと思えば、リヴァイの腕に抱き抱えられていて、抵抗する隙もなくベッドへ運ばれあっという間に組み敷かれてしまった。
「ちょっ、リヴァんぅっ…!!」
荒々しく唇を塞がれて、すぐに何も発言することができなくなった。