第24章 異世界トリップ
「ふ、二人きりで、ゆっくり…ですか。」
「あぁ。こうして旅行に来れたのも何かの縁だろ。少しくらい羽伸ばしたって罰は当たらねぇと思うがな。」
「そ、そうです…ね。」
さっきから慌てるばかりの私とは正反対に、やけにのんびりしている兵長。
兵長の世界へ転がり込んだ時の私とは真逆な態度。
漠然と、やっぱりこの人には敵わないなと思った。
それに兵長の話を聞いていたら、こんな機会またとないっちゃないんだし、少しくらいならゆっくりしてもいいのかな、とも思えてしまった。全然問題は山積しているのだけれど。
「一個だけ、特に気にかかってることがあるんですけど…」
また窓の外を眺め出した兵長に話しかけた。
よっぽど外が気になるのだろうか、後で外へ出てみようかな、なんて思いつつ。
「なんだ?」
「確か、壁外調査まであと7日でしたよね…」
「…タイムリミットはあと7日だって言いたいのか?」
「7日…なのかどうかは言い切れないです。私は3ヶ月あっちにいたのに、戻ってきてみれば同じだけ時が進んでいるどころか少し戻ってましたから。
だから、同じように兵長が何ヶ月もここにいても、向こうではまったく時が進んでないかもしれないです。だけど…」
もし仮にその法則が当てはまらなくて、向こうも同じスピードで時間が流れていたとしたら。
「何が起きてもおかしくない…同じだけ時間が進んでるかもしれねぇってことは俺も考えてた。」
「もしそうだとしたら、やっぱりあまり悠長なことは言ってられないと…」
「そうだな。リミットは今日から6日間だ。悪い方を想定して、出立の前日には帰れるように何とかする。」
窓枠にもたれかかって腕を組む兵長と視線がぶつかった。
真剣な目つき。
やはりリヴァイ兵長はリヴァイ兵長だ。
与えられた使命を全うし目的を果たすために、真っ直ぐ生きている。
そんな兵長が好きだ。
そんな兵長だから好きになった。
もちろんそれだけではなくて他にもたくさん好きな所はある。
だけど、迷いのない強い瞳はそれだけでリヴァイ兵長という人の魅力を最大限にまで引き出す。
「はい。必ず、帰りましょう。」
私もまっすぐ見つめて逸らさなかった。
この時私は、影で見え隠れする複雑な思いを振り切るかのように、まっすぐ、曇りなく、そう答えた。