第22章 制御不能 ※
汗で張り付いた前髪を横へ流し、額にキスを落とす。
耳の横で咲いていた美しい花型のヘアアレンジは乱れ、無残に散らばってしまっていた。
「へいちょ………ごめん、なさ…」
「何も言うな、お前は悪くない。俺がちゃんと見てなかったせいだ。」
「そんなことっ…」
「無理に話さなくていい。余計苦しくなる。」
リヴァイは泣きそうなエマを宥めるように言うと、絞められていた首元をそっと指でなぞった。
エマをこんな目に遭わせてしまった自分の不甲斐なさに腹が立つ。
守ると約束したのに守ってやれなかった…
リヴァイは激しい自責の念に飲み込まれそうになったが、自分の下で苦しそうに胸を上下させるエマを見て負の感情を振り払った。
今は苦しそうなエマを前にして感傷に浸っている場合ではない。
リヴァイはエマを安心させるようにもう一度額にキスをすると、ドレスをたくしあげた。
下着は脱がされていない。
ということは最悪の事態だけは免れたのか…
薬を飲まされ身体の自由を奪われた状態で首を絞められていたのはこの目で見たが、直前まで何をされていたのかまでは分からない。
今すぐ真実を知りたい気持ちは山々だが、エマはもう思い出したくもないかもしれない。
否、思い出したくないに決まってるだろう…
だからいずれ、自分から話したいと思った時に話してくれればいい。
それよりも今は、エマを一刻も早く苦しみから解放してやるほうが先だ。
「エマ、いいか?今から余計なことは考えずに俺に身を預けろ。」
リヴァイの問いかけに不安そうに瞳を揺らし、弱々しく頷いた。
それを確認すると、リヴァイは壊れものを扱うかのようにそっと頬に手を添えて、静かに唇を重ねた。