第20章 小さな違和感
翌朝一
エマは昨日の花壇に来ていた。
昨日ここを整備していた途中で厩舎の掃除に行って、道具やらをそのままにしていたため朝食の前に片付けようと思ったのだ。
うぅ…体の色んなところが痛いし、重い……
結局あれから二回も抱かれ、最後はそのまま気絶するように眠りに落ちた。
リヴァイに言わせればあれが“ゆっくりした”ことになったらしい。
さすが人類最強、と言ったところだろうか…リヴァイの凄まじい体力と精力を思い知った夜になった。
今日は大人しく執務に専念しよう…
そう考えながらよいしょっと枯葉の入ったゴミ袋を持ち上げた時、急に手からその重さが消えた。
「今日は枯葉集めをしてくれていたのか。」
「…団長!」
声のする方を振り返ると、エマから奪ったゴミ袋を持って“おはよう”と微笑むエルヴィンが立っていた。
「お、おはようございます!
昨日ここを掃除してたんですけど後片付けがまだだったので…あ!すみませんゴミ袋!」
「他にも掃除道具を持って行くんだろう?これくらい持つよ。私もちょうど戻るところだしな。」
「すみません、ありがとうございます。団長は、訓練…ですか?」
エルヴィンをよく見ると腰に立体機動装置を付けていた。
「あぁ、机にばかり向かっていては体が鈍ってしまうからな。」
「そうなんですね…早朝からお疲れ様です。」
兵舎内で武装しているエルヴィンを見たのは初めてだった。
でも団長である彼も一兵士なのだ。
兵団の最高指揮官であるため実戦に挑むことは少ないが、いざという時に体が思うように動かせないようでは困るということだろう。
忙しい中でその努力をも怠らないエルヴィンをさすがだと思った。
「ありがとう。エマもお疲れ様。
良かったら朝食までの間、久しぶりに朝のティーブレイクでもどうだ?」
「えっ?でも団長も色々と忙しいのでは…」
話しながら歩き出すと、爽やかな笑顔を向けいつもの調子で誘ってくるエルヴィンにエマは少し戸惑った。
「少しの休息も必要だと思ってね。付き合ってくれないか?」
「わ、私でよければ…」
そんな綺麗な笑顔で頼まれてしまえば断ることは出来ないのだけれど…
エマは一抹の不安を抱えながらもエルヴィンの後を着いて行った。