第19章 休息 ※
コンコン―
「エマです。」
ドアの前に立ち名前を告げると中から短い返事が聞こえてきた。
やはりもう帰っていたようだ。
「失礼します。兵長、お疲れ様です。」
「あぁ。」
執務室に入ると、机でいつも通り頬杖を付ながら書類に目を通しているリヴァイの姿があった。
「任せておいた仕事だが、助かった。議事録もよくできてる。これならエルヴィンに提出しても大丈夫だろ。」
リヴァイは手に持つ紙を少し上にあげながら言う。
エマの作った書類に目を通していたようだ。
「ありがとうございます。
あの…兵長も弔問お疲れ様でした。」
顔には出ていないが今日はたぶん疲れているだろう…
こんな時になんと声をかけるのが一番いいいのか分からず無難な言葉になってしまったが、エマは労りの気持ちをできるだけ込めて声をかけた。
リヴァイはそんなエマに端的に礼を言うと、続けざまに質問を投げかけた。
「それで、こんな時間までどこへ行っていた?」
自分より遅くここへ戻ってきたエマだが、尋ねるリヴァイは特に不機嫌な様子ではなさそうだ。
「あ、えと…与えられていた仕事が終わったので厩舎の掃除をしていました。」
厳密に言うとさっきまでいた場所は実験施設なのだが、そう答えるのは正直気が引けてしまったエマ。
まぁこれも答えとしては間違っていない。
「エルド達の手伝いか。にしても結構時間がかかったな。」
「思ったより時間がかかってしまって…た、大変ですね!初めて厩舎の掃除を経験したけど、思った以上に重労働でしたし!」
「……ほう、それはご苦労だったな。まぁそうやってたまに体を動かすのもいいだろ。」
「そうですね!良い気分転換にもなりました…」
やはり実験施設で巨人を見てしまったことを後ろめたく思い、なんとなく返事がぎこちなくなってしまう。
そんなエマの気持ちを知ってか知らずか、リヴァイはあくまでいつも通りに話しているようだった。