第18章 少女が見たもの
……寒い。
微睡みの中、すうっと体を撫でる冷たい空気を感じ重たい瞼をゆっくり開けた。
少し体を起こして見れば自分には掛け布団が一切かかっておらず、代わりに横で眠るエマの体にぐるぐるに巻きついている。
「…どうりで寒いわけだな。」
布団に包まりスヤスヤと寝息を立てているエマの可愛らしい寝顔に、掛け布団を取られたことなどまったく気にならなくなる。
昨日は色々あったが、今朝こうしてエマの穏やかな寝顔を見ることができて本当によかったと、リヴァイは安堵していた。
顔にかかっている髪を流し、閉じられた瞼にそっとキスをする。
「ん……」
「起こしちまったか?」
「……へいちょう、」
気だるそうに瞼を開けるエマ。
ぼんやりした意識のまま無意識的に名前を呼ぶ姿がどうしようもなく愛おしくて、エマの血色のいい唇に唇を重ねた。
唇が触れるだけの優しいキスを交わしてお互いの顔を見つめれば、どちらからともなく頬を緩める。
「…兵長」
照れくさそうに笑みを零し、自分の体へ抱きついてくるエマ。
その華奢な背中に腕を回し、艶のある黒髪を優しく撫でてやれば、エマは主人に擦り寄る猫のように胸へ顔を埋めてきた。
こんなに幸せいっぱいの気持ちで迎える朝は初めてだ。
エマの温もりを全身で感じながら、リヴァイはひとときの至福の時間を噛み締めた。
「エマ。まだ外は薄暗いが、早々に準備して帰らなきゃならねぇ。」
束の間のおだやかなひと時を過ごし、リヴァイはゆっくりと体を離しながら告げる。
このままゆっくりとエマと過ごしていたいがそうもいかない。
昨日の壁外調査の事後処理にはまだ何も手をつけられていないのだ。
「!!
そうでしたよね…すぐに準備します!」
エマもリヴァイの言いたいことをすぐに理解したようで、慌ててベッドから起き上がるとすぐに身支度を整え出した。