第3章 いきなりピンチ
一コンコン
「エマです。」
「入っていい。」
「失礼します!」
少し緊張しながら扉を開けると、早朝から机に向かう部屋の主の顔が見えた。
机の上にはびっしりと書類やら分厚い本が積まれていて、兵団を取り仕切るトップの忙しさが伺える。
「おはよう、エマ。ずいぶんと朝が早いんだな。」
「おはようございます!
団長こそ、朝早くからお疲れ様です。お仕事中にすみません。」
「いや、構わない。それより…似合っているな。」
エルヴィンはスっと立ち上がりエマの前に立つと、その姿をじっと見つめ感想を口にした。
「そうですかね?よかった…でも、あんまり見られると恥ずかしいです。」
「あぁすまない。兵服姿の君もとても魅力的でつい見とれてしまったよ。」
「なっ!!」
恥ずかしげもなくそんな台詞を言うエルヴィンに、エマは突然口説かれたような気分になってしまい、驚いて頬を赤らめた。
「ハハ、正直な感想を述べただけなんだがね。
私服姿の君もいいが、兵服もよく似合っている。これで馬に跨ったら益々様になりそうだ。」
エルヴィンはなんだか楽しそうだ。
「あ、ありがとうございます…。」
これは完全にからかわれているなと思うと、また恥ずかしくなって、尻すぼみにお礼の言葉を発した。
「それで、私に何か用だったかな?」
「そうだ!あの、書庫の鍵を貸していただけませんか?」
「どうして?」
「昨日、ハンジさんから色々お話を聞いて、もっと勉強したいと思って!」
恥ずかしがっていると思ったら、今度はキラキラした眼差しをエルヴィンへ向けている。
「そうか。君がこの世界に興味を持ってくれたことは私も嬉しいよ。日中は訓練でほとんどの兵士は兵舎内からいなくなるから貸切だろう。存分に使ってくれ。」
エルヴィンはそう言うと、兵舎内の施設の鍵がまとめてある棚から、書庫の鍵を取り出して手渡した。
「ありがとうございます!」
「リヴァイやハンジは訓練に出てしまうが、私は基本的に兵舎内にいることが多い。何か困ったことがあれば尋ねてくれ。」
「助かります!」
エマはペコリと頭を下げて執務室を後にしようと踵を返そうとしたが、エルヴィンにその背中を呼び止められた。