第17章 心を通わせた先 ※
「兵長…」
「?なんだ」
抱き合った身体を離して汚れた腹を綺麗にしてやっていると、突然驚いた様子のエマに名前を呼ばれた。
エマの目線の先を見ると、白いシーツが薄い紅色に染まっている。
先程エマが横たわっていた場所だ。
恐らく先の情事の際に出血したのだろう。初床ではよくある事だ。
「お前が頑張ってくれた証だ。」
「すみません、これから寝る場所なのに汚してしまって…」
申し訳なさそうな視線を向けてくる。
単純に汚してしまったことに加え、極度の潔癖症な自分のことを思って余計に申し訳なく思っているのだろう。
「そんなことは気にするな。むしろ俺は嬉しいと思ってる。」
「え?」
そんな馬鹿なという表情で聞き返すエマを、心底可愛い奴だと思ってしまう。
「確かにお前の思ってる通り俺はかなりの綺麗好きだが、これは別だ。お前が一生懸命受け入れてくれたと思うとこの染みさえ愛おしく感じるんだよ。」
「う……あ、ありがとうございます……」
恥ずかしげもなくはっきりと思いを口にするリヴァイに、戸惑ったエマはよく分からないお礼を言ってしまった。
兵長はこんなにもはっきりと気持ちを表現してくれる人だったっけ…?
数時間前まで恋人同士じゃなかったのに、今はこうして真っ直ぐに愛情を伝えてくれる。
なんだか不思議な気分だったが、それを素直に嬉しいと思ってしまう自分もまた、どうしようもなくリヴァイに惚れてしまっているんだなと思った。
「…っくしゅ!」
「そろそろ服を着ろ、風邪を引いちまう。」
「はいっ、ありがとうございます。」
3月ももうすぐ半ばだが、夜も深くなってくると室内でも少し寒い。
汗ばんだ体はひんやりとした空気に晒されていた。
リヴァイはぶるっと体を震わせたエマの肩にシャツを羽織らせ、自身もシャツに袖を通した。
エマも肩にかかったシャツに袖を通しながら、ふとリヴァイを見ると、前がはだけたシャツの隙間から覗く身体に思わず二度見してしまうのであった。