第16章 旅立ちの日
「なら、余計にこのまま元の世界に帰さなくてよかった。誤解だらけのまま勝手に帰られちゃ、こっちも諦めがつかねぇからな。
これでお前ん中のわだかまりも解けただろ。」
「はい。少しでも疑うような真似してごめんなさい…」
小さくなって謝るエマの頬を、心地良い香りを纏った風がふわりと撫でた。
心の底から安心する、大好きな人の香り…
エマの思考が追いつく頃には、彼女の身体は再びすっぽりとリヴァイの胸の中に収まっていた。
「俺は、お前と同じ気持ちなのが分かったんだからそれでいい。
けど…もう勝手に一人で帰ろうとするんじゃねぇぞ。」
背中の方から掠れた声が聞こえ、それと同時に抱きしめられる腕に力が入ったのが分かった。
「……っはい。」
エマもその溢れる想いを、背中に回す腕に込めた。
夜空に瞬く満天の星と、満ちた月。
闇夜を彩る輝きは、まるで彼らを祝福しているかのように、二人の姿を優しく照らすのだった。
一神様
今まであまり運命とかそういうものは信じてこなかったけど。
この世界にこうして降り立ったのは、もしかしたら彼に会うためだったんじゃないかと、今はそんなことを考えてしまっています。
神様……
もしできるのならば、もう少し、もう少しだけこの世界で生きることを許してくれますか…?