第15章 喪失 ※
翌日-
今日も日課になっている掃除で一日が始まる。
静けさが漂う幹部棟の廊下をエマは丁寧に掃いていた。
「んーっ!」
一旦手を止めホウキを壁に立てかけると、エマは両手を大きく上にあげ伸びをする。
結局昨夜はモヤモヤした気持ちのまま眠りについていた。
しかし今朝起きるとリセットとまではいかないが、幾分か気分は落ち着いていた。
今日も頑張るぞ!
エマは頬を両手でパンパンと叩き気合を入れたのと同時に、目の前の部屋のドアが開かれた。
「おわっ?!」
「おはようエマ。今日も朝からご苦労だな。」
中から出てきたのはエルヴィンだ。
そう言えばここは団長室の前だった。
「おはようございます!団長ももうお仕事ですか?お疲れ様です。」
早朝から兵服をピシッと着こなしているエルヴィンに、労いの言葉をかける。
「お疲れ様。少しね。それより、もし掃除のキリがつきそうなら少し休憩していくか?」
「え?でも、団長今からどこかへ行こうとしたんじゃ…?」
部屋から出てきたエルヴィンはこれからどこか目的の場所に行くものだとばかり思っていたので、少し戸惑う。
「いや、廊下から床を掃く音が聞こえてきたから君かと思ってドアを開けてみただけだよ。読みは当たっていたな。」
エルヴィンは爽やかな朝にぴったりの清々しい笑顔で、嬉しそうに答えた。
そんな顔をして素直に言われてしまうとついドキっとしてしまう。
「そ、そうだったんですね!大正解でしたね!………あ!じゃあこれだけ掃いたらお邪魔してもいいですか?」
「あぁ、もちろん。」