第14章 心を癒すのは
バタン…
自室のドアを後ろ手で閉め、そのままドアにもたれかかった。
自分を落ち着かせるように小さく息を吐く。
壁外で巨人と戦う時はいつもだが、壁内でこんなに心臓が高鳴ることがあっただろうか…
リヴァイはさっきの自分を自嘲するようにフッと鼻で笑った。
思いを口にして、エマに口付けしただけでこうもいっぱいいっぱいになっちまうとはな。
俺も大概不器用らしい。
あんなやり方でしか気持ちを伝えることができなかったが、エマには伝わっただろうか。
でもとりあえずは、これで自分の気持ちにはケジメを付けることができた。
もう迷いはない。
エマが振り向いてくれるなら手段は選ばない。
どんな結果になろうと、後悔はしない。
これから、この気持ちに正直に生きていくと決めたんだ。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
「………………」
同じ頃、エマは自室のベッドに腰を掛け、ぼーっと壁の一点を見つめていた。
…まさかの展開だった。
ガキには興味ないとか、俺といても幸せになれないとかそんな言葉ばかり聞いてきたから、今回こそ絶対はっきり振られると思ってたのに…
エマは唇を手でそっとなぞった。
まだ心臓が落ち着かない。
今度は私の勘違いなんかじゃないんですか?
諦めなくていいんですか?
……まだ期待しても、いいんですか…?
「はぁ……」
もやもやする気持ちを抱えため息をついて視線をズラせば、ベッドサイドのテーブルに飾ったばかりの木彫りの人形が目に入る。
慈愛のこもった優しい眼差しのエルヴィンが頭に浮かんだ。
何も考えずただエルヴィンと楽しい時間を過ごした昼間のことが、遠い昔のように感じる。
あの時は心から楽しく気持ちも晴れ晴れとしていたのに、その気持ちもこのモヤモヤにかき消されてしまいそうである。
エマは無理矢理思考を断ち切るように、勢いよくベッドへと潜り込んだのだった。