第14章 心を癒すのは
「エマ、ちゃんと休息取ってるか?」
「はい、しっかり睡眠はとってるのでで大丈夫ですよ!」
ランプに照らされたエマの顔を見て、モブリットが尋ねる。
エマは心配そうなモブリットに明るくそう言うと、作業する手元に目線を落とした。
あの日の翌日から、エマはがむしゃらに働いた。
早朝の掃除にも一段と磨きをかけたし、昼間は休む間もなくペンを走らせ、手が空けばエルヴィンの手伝いもした。
そして夜はハンジの研究室で、巨人捕獲用の道具の準備を手伝う。
そんな日が一週間ほど続いていた。
「そうか…昼間の仕事だけでも十分多忙なはずなのに、毎晩こうして手伝ってくれて俺達は助かるんだが、ちょっと頑張りすぎじゃないかと思ってな。」
「いいんです。元々忙しい方が好きだし、動いてた方が余計なことを考えずに済むので。」
「ならいいんだが…でもあまり無理はするなよ。」
「ありがとうございます。」
壁外調査前の忙しい時期にエマがいてくれて正直だいぶ助かっている。
しかし、突然昼夜問わず狂ったように働き始めた彼女のことがモブリットは心配であった。
様子から察するにハンジは何か知っているようだったが、何となく首を突っ込むなオーラを感じたので、この気がかりは自分の中にしまい込んだままにしている。
「ハンジさん、今頃ちゃんとお風呂入ってますかね?」
エマは巨人捕獲用の網を捕獲銃に詰める作業をしながら、モブリットへ話しかけた。
「今日はかなり本気で言ったから、大丈夫だと思うよ。」
「この間はお風呂行くって言ったのに、書庫で本読み漁ってましたよね?」
「ハハ、そんなこともあったな。分隊長は興味のあることになると本当に周りのことはどうでも良くなってしまうから。」
「食欲も睡眠欲も後回しですもんね、でもそこまで物事に没頭できるって凄いと思います。」
「そうだな、なかなかあんな人はいない。」
「でも、そんなハンジさんについて行ってちゃんと支えてるモブリットさんも相当凄いと思いますよ。普通の人ならとうに体壊してます。」
「ハハハ、周りからもよく言われるけど、実は自分はそんなに苦痛じゃないんだ。それよりも、なんだか放って置けなくて。」