第11章 ウォール・シーナにて ※
「おはようございます!リヴァイ兵長!」
「あぁ。」
翌日の早朝、エマが兵舎の門の下で待っていると、馬を連れたリヴァイが厩舎の方から歩いてきた。
「早かったな。」
「私もさっき来たところです。」
「そうか。朝は冷えるな。」
「そうですね…でも、冬の朝って好きです。空気がとっても澄んでるし、ピンと張り詰めてる感じとか。」
まだ山から顔を覗かせて間もない太陽を、エマは目を細めて眺める。
「…そうだな。」
リヴァイはそんなエマの横顔をチラリと盗み見ると、同じように朝日を見つめた。
「兵長の馬、真っ黒で綺麗な毛並みですね。名前はなんて言うんですか?」
エマは不意にリヴァイの馬に視線をやると、興味ありげに聞いた。
「イーグルだ。」
「イーグル……いい名前ですね。イーグル、今日はよろしくね!」
エマが近づくと、イーグルは耳をピンと立ててエマの方を向いた。
「お前に興味があるようだな。馬は最初にこうやって自分の手の匂いを嗅がせてやると安心するからやってみろ。」
リヴァイはイーグルの鼻へ自分の手の甲を近づけてみせた。
「……こう、かな?ひゃあっ!!」
エマもリヴァイの真似をして手を近づけるが、フンッとイーグルの激しい鼻息がかかり、思わず手を引っ込めてしまった。
「フッ、遊ばれてるな。」
リヴァイは慌てるエマを見て思わず吹き出すと、エマの手をとり再びイーグルの鼻へと運ぶ。
「こいつはエマって言うんだ。仲良くしてやってくれ。」
「…エマです!よろしくお願いします!」
「お前、なに馬相手に敬語になってんだ。」
イーグルに真剣に挨拶するエマに、リヴァイは頬を緩めたまま思わず突っ込む。
「あっ、なんかつい…」
「イーグルはお前のことを気に入ったみたいだぞ。そのままこいつの鼻を撫でてやれ、喜ぶ。」
「…こうですか?」
エマが何度か鼻を撫でると、イーグルは首を何度か縦に振った。
どうやら喜んでくれているようだ。
「か…かわいい。」
素直に反応してくれるイーグルに、早くも癒やされてしまうエマであった。