第10章 翻弄される
「エマの住んでいた所は日常的に馬に乗る習慣はないのか?」
エルヴィンが興味ありげに問う。
「普通の人はまず乗りません。というか馬が街を歩く光景も見られませんよ。」
「それなら、長距離はどうやって移動するんだ?」
「車とか電車とか…」
「くるま…?」
エルヴィンは聞いたことのない単語に首を傾げた。
「こいつのいた世界の文化はこっちと違いすぎてる。まともに考えても分からねぇことばかりだぞ。」
リヴァイが向かいから口を挟んだ。
「ほう…なんだかますます君の世界に興味が湧いてくるな。」
「そう言われてしまうと、私も一度団長達を自分の世界に連れていってみたいと思ってしまいます。」
「ハハ、そうだな。ぜひいつか連れて行ってくれ。」
ん?
あれ?
ふとエマは、エルヴィンとリヴァイと談笑している自分に気がつく。
ついさっきまでエルヴィンに指を舐められ赤面させられた挙句、リヴァイにその様を見られてしまい気が動転していたというのに。
自分はまんまと彼らのペースに流されているのか?
しかも、二人ともやっぱり特に顔色も変えず普段通りだ…
これが大人の男の余裕っていうやつなのか。
というか、こうもあっさりした態度を取られていると、二人が自分に気があるだなんてハンジさんの思い過ごしなんじゃないかとさえ思えてくる。
リヴァイ兵長もガキは好みじゃないとか前言ってたし、
やっぱりエルヴィン団長も単に私の反応を面白がってるだけな気がしてきた…
エマはそんなことを考えつつ、二人と気まずい雰囲気にならなくて済んだことにはほっと胸を撫で下ろしていたのだった。