第2章 始動
ガチャ——
「こんな早朝にどうした。それにいつもノックをしろと言っているだろう」
「エルヴィン、お前に会わせたい奴がいる。……入れ」
リヴァイの自室から長い廊下を経て行き着いた先は、調査兵団の団長室。リヴァイの後ろに待機していたエマは促されると室内へ足を進めた。
「は、初めまして! エマ・トミイと申します!」
エマは団長室に行く途中リヴァイに指示された通り、名前と苗字を反対にして名乗った。
こちらでは欧米のように名前を先に名乗るのが普通らしい。ヘンテコな名前の理由までエルヴィンに説明をしなくて済むし、ここでは最初からこう名乗っておけと言われたのだ。
「リヴァイ。俺にまた新しい女を紹介しにきたのか?」
「わざわざお前に女を紹介したことは一度もねぇはずだが?」
エルヴィン、と呼ばれていた男は、フッと笑うとエマの前へ歩み寄った。リヴァイに比べとても大柄で、元々身長がそんなに高くないエマは、自然と彼を見上げる形になる。
「私はここを取り仕切っている、調査兵団十三代団長のエルヴィン・スミスだ」
「よろしくお願いします」
手を差し出され握手を交わす。エマは彼のことを穏やかで優しそうな人だと思った。
綺麗で澄んだ碧い目がじっとエマを見つめる。気を抜くとその瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
「よろしくな。それで……君がリヴァイに連れられて早朝に私のところに来たということは、何か君には特別な理由があると見ていいのかな?」
「え?」
「察しが良くて助かるだろ? エルヴィンはこういうやつだ」
出会ってすぐ、まだ何も話していないのに自分のことを見透かされたような発言に驚いていると、隣のリヴァイが涼しい顔をしながら声をかけてきた。