第9章 好きって何?
エマは目を見開きゴクリと唾を飲んだ。
婦人達の相手……というのが、単なるお話相手だけではないというのは、複雑そうな表情で話すハンジの顔を見れていればすぐに分かった。
「それは…大変なお仕事です…」
「そう。だけど彼ら自身が一番、それが必要なことだと理解した上でやっているからね。こっちも感謝しなくちゃいけない。」
「そうですよね…」
エマにとってこの事実は軽くショックであったが、自分の兵団のためにそこまでできる行動力にも驚いていた。
上に立つ者の責任感ももちろんあるのだろうが、きっと二人とも調査兵団のことを本当に大切に守っていきたいと思っているからこそ、こんな仕事も出来てしまうのかもしれない…
エマはそんな風に思った。
「エマ、ごめん。仮にもエマが好きかもしれない相手のことをペラペラ喋っちゃって…つい。」
「いえ!びっくりはしましたけど、聞いておけて良かったです。」
「そうか、なら良かった。エマって意外と肝座ってるよね!まだ若いのに。」
ハンジがそう言うと、エマは自嘲するように返す。
「そんなこと無いです。異性関係では少しのことでめちゃくちゃ動揺してますし…」
「そこはそのままでいいんだよ〜。」
「私はもっと動じないようになりたいですよ!これじゃあ寿命縮まりすぎてすぐに死んじゃいます。」
「アハハハ!それは困るね!」
エマが冗談めかしてそう言うと、ハンジは声を出して笑った。
「まぁエマのそういう純なところが二人はいいと思ってるんじゃない?」
「そ、そうなんですかね。」
「そうだと思うけどね!ま、とりあえず明日からエルヴィンの元で頑張っておいでよ!応援してるよ!」
「はいっ!ありがとうございます!」
ハンジに肩を叩かれエールを受け取ったエマは、答えの出ない自分の気持ちは一旦様子を見ることにして、やるべき事を全力でやろうと気持ちを切り替えていった。