第9章 好きって何?
「ハンジさんって、恋したことあるんですか?」
「んー?あるよー?」
ある日の晩、エマはいつもの様にハンジの部屋に来ていた。
「あるんですね?!」
エマのリアクションを聞いて、ハンジは読みかけの本を開いたまま机に伏せ、エマを見た。
「意外だった?」
「すみません、ちょっとだけ。ハンジさんは人よりも巨人に片想いしてそうだと思ってたんで。」
「アハハ!エマもなかなか言うようになったじゃない!今はそれでほとんど正解だけど、私も君くらいの時は恋のひとつくらいしてたよ?」
「そうなんですね。その…恋するって、どんな感じでしたか?人を好きになるとかって…」
エマは恥じらいながらも質問を投げかける。
突拍子もないことを聞かれたハンジは目を丸くしたが、思いのほか真剣な顔のエマを見て真面目に答えた。
「んーそうだなぁ。気が付くとその人のことを考えてたり、話したりするとドキドキしちゃうとか?」
「なるほど…他には?」
「そうだなー、触れたいと思ったり…ずっと傍に居たいと思ってしまうかな。」
エマは、ほうほうと頷くとまたも真剣な表情で何かを考えているようであった。
「エマさ、もしかして……恋しちゃってるの?!」
ハンジは突然鼻息を荒くして彼女に詰め寄る。
「……そうなのかもです…」
グイッと顔を近づけてきたハンジに少し体を引きながら、ちょっと恥ずかしいそうに答えるエマ。
「何その中途半端な解答!」
「いや、自分でもよく分からなくて。」
エマは恥じらいながら、困ったような眼差しをハンジに向けた。
「ふぁー!愛しのエマが悩んでるのにこれは放ってはおけないね、ぜひ話を聞こうじゃない!」
ハンジは変な雄叫びを上げるとドサッとエマの隣に座った。
「ハンジさん、テンション変です…」
「そりゃあテンションも上がるでしょ!それでそれで、誰のことなの?」
ハンジの顔が近い。
メガネが光に反射してキラリと光った。
「…実はそれもよく分からないんです。」