第1章 出会い
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ソファに座って腕を組んだまましばらく目を瞑っていると、ベッドから規則正しい寝息が聞こえてきた。
「いい度胸してやがる」
こいつ、いきなり飛び込んできた見ず知らずの場所で、よくすぐに寝られるな。
ソファから遠目に女の寝顔をしばらく眺めたあと、小さく笑ってリヴァイは再び目を閉じた。
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「おい、起きろ」
「ん……」
事務的な淡々としたモーニングコールにエマの意識は浮上させられた。のっそりと目を開けて数回瞬きをすると、霞む視界が段々鮮明になってくる。
あ、れ…………見慣れない天井……ここはどこ?
私は、どうなったんだっけ……?
「!」
首下まで被った布団をガバッと剥いで飛び起きた。ほんの数秒で頭の回転が始まっだと思えば、すぐに体を起こさずにはいられなかったのだ。
「リヴァイさん……夢、じゃなかったんですね」
「あぁ」
やっぱり現実なんだ。
感情の動きのない単調な返事を聞いて絶望する。
リヴァイはベッドから少し離れたところに腕を組んで立ち、昨夜と同じように鋭さが際立つ三白眼をこちらへ向けている。
あぁ、やばい。怒ってるかな。
私、寝すぎちゃったのかな。
それともやっぱり無理にでもソファで寝るべきだったかな……
「よく眠れたみたいだな」
「その、すごく寝心地のいいベッドだったので、つい」
「そうか」
あれ? 少し口元が緩んだ?
……どうやら機嫌は悪くないようだ。 よかった、少し安心した。
「さっそくだが支度をしろ。エルヴィンの所へ話をしに行くぞ」
「あ、はい、分かりました」
エマは勢いよくベッドから降りると、すぐに支度を始めた。
とは言っても着るものは制服が無理となると昨日借りたこの洋服だけだから着替えは不要、口をゆすいで髪を適当に梳かすぐらいだ。
リヴァイはもう準備ばっちりなようで、慌てて準備をするエマをよそ目にまた外を眺めていた。
「お待たせしました!」
「なら行くぞ」
リヴァイに続いて部屋の外へと続く扉をくぐる。注ぎ込む朝日が目に入り込んで思わず目を眇めた。
いよいよ今日から、ここでの生活が始まるのだ。