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愛のカタチ【ONE PIECE】サボ編

第5章 "過去"というライバル


部屋に戻ると、扉を背に座り込んだ。

コアラが語るサボは、全てリラの知らない彼で。
コアラと自分は革命軍にいる期間が違うのだから、当然の事なのに。
コアラはサボのことをよく知っていて。

敵わないと感じた。
彼の顔を抓ったりできるコアラは、サボにとってどんな存在なのだろうか。
そんなことを考えていると、自然と涙が溢れてきた。

自分の中を占める黒い感情の正体が分かった。

(私……コアラさんに……嫉妬してる……)

そして、それだけ、彼のことを好きなのだと気がついた。
コアラとサボの間にあるものは、リラと彼の間にはない。

「…もう……コアラさんからサボの話を聞きたくない……」

膝を抱え、濡れた髪のまま、泣いた。
涙が止まらなかった。

しばらくすると、電伝虫が鳴った。
サボからの連絡だった。
リラは出るのを躊躇していたが、鳴り止まないので出ることにした。

「…もしもし……」

「もしもーし、リラ?もしかして、もう寝てた?」

サボは彼女の、元気のない声が気になった。

「……ううん、起きていたわ……」

鼻をすする音に、サボは敏感に反応した。

「リラ、泣いてる?」

リラは受話器の前で必死に堪え、無理に笑顔を作って答えた。
「…ううん…泣いてないから、心配しないで…」

「無理するな…」
(声が震えてるじゃないか…)

サボは、電伝虫を見た。

受話器の向こうの、愛しいリラの表情を写していたから。

「ほんとに大丈夫だから…」

リラは、涙を拭って、もう一度受話器に向かって笑顔を作った。

「……わかった。今日、なにした?」

他愛もない話が、彼女の心を少し落ち着かせた。

それからしばらく話をして、リラは眠りについた。

といっても、いろいろ考えてしまって眠れるわけがなかった。
サボ自身から昔の話を聞きたかったし、聞ければ少しはこの感情も違うものになっていたのかもしれない。

声を聞いたら……寂しさが溢れ出してきて、ベッドの中で泣いた。




サボからの電伝虫は、偵察から帰る日の前の夜まで毎日続いた。

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