第3章 君があまりにも可愛くて
「どうした?」
「ううん、なんでもない。」
曖昧な笑みを浮かべながら、作業を続ける彼女の姿には明らかに動揺が見て取れた。
「これ、チェック終わってるから…」
リラの声も手も震えていた。
すると、ちょうどその時─
バルティゴに雷鳴が響いた。
”ピカッ!!ゴロゴロ…ドッカーン!!”
ぴくりと反応したリラは、咄嗟に目を閉じた。
”ピカッ!ゴロゴロゴロ…”
光ってから、音が鳴るまでの間の間隔がない。かなり近いことを意味している。
リラは、サボに気づかれないようにと、必死で怖いのを我慢し、仕事を続けたが、サボには隠せなかったようだ。
サボはすぐに彼女の様子に気がついた。
震えている、リラの手を取る。
「…雷、怖いんだろ?」
「…だ、大丈夫。ちょっと部屋に行ってきていい?毛布取ってくる。毛布被れば大丈夫だから。」
”ピカッ!ゴロゴロゴロ…ドーン!”
振動で建物が揺れた。
不意に、サボが椅子に座っているリラを抱きしめた。
「……サボ…離して…毛布…」
「怖いなら、怖いって言えよ。 震えてるじゃねぇか。毛布ならいま、取ってやる、待ってろ。」
そう言うと、サボはリラから身体を離し、自分のベッドの毛布を取り、下を向いて両手で耳を塞いでいる彼女を頭から包み込んだ。
サボが毛布ごと、リラを抱きしめた。
「顔を上げて?」
抱きしめた腕の力を緩め、声をかけると、見上げてくるリラの瞳には、涙が溜まっていた。
サボは、彼女の涙を優しく親指で拭ってやった。
「大丈夫。」
リラの瞳を見つめるサボ。
「…サボ…怖い…」
「大丈夫、俺がそばに居るから。」
再び抱きしめつつ頭を撫でると、リラは耳から手を離し、なにも言わず、サボの背中に腕を回し服をギュッと掴んだ。
……どのくらい、そうしていただろうか。
音が遠ざかっていく。
「…もう、大丈夫…だから。」
リラが、サボの服から手を離すと、サボも抱きしめていた腕を緩めた。