第61章 遂に…対峙の時②
るな「脳梗塞とかで片側に麻痺が残っても、動く方の手でお年寄りは上手く服のボタンを止めたりおしぼりだって巻く事が出来るんです。出来ない所を介護者が手伝うんです」
潤「出来ない事を『一人でやらせろ』とかありえないよな」
翔「少しでも快適に過ごして 頂きたいと思いませんか?不快感を感じない様に介助者が捲れた中のシャツを手首の所まで伸ばして差し上げる。それを介助というと思いませんか?『そんな事しなくていいから』『自分でさせて』先程と同じ事。不自由な方の手のシャツは動かせる手で直せても……患側の手ではもう片方のシャツを下ろす事は出来無いんです。万事そんな感じなで対応しましたよね?」
るな「出来ない事をするという事は、時間が掛かるという事なの。なのに『早くしなさいよ』とかお年寄りに 矛盾した事を言うなんてありえません!」
翔「食事も靴を履くのも。ほんの少しだけお手伝いするのが介護です。貴方達のお年寄りに対して『まだ出来ないの?』『早く食べて』『早く服着て』『 何、おむつ外してんの?』心の無い人になぜ介護という仕事を選んだのですか?と問いたいです。お年寄りは人生の先輩なんですよ?人権を無視した様な態度取る事は到底許されるものではないんです。自分のイライラを相手にぶつける事程みっともなく愚かな事ないの!」
潤「こんな矛盾に一番抵抗したかったのは……お年寄りだったんだよな?」
るな「お年寄りは何をしても何を言っても分からないだろうから。なんて。アナタ達の勝手な言い分なんです。お年寄りが同じ事何回も言うのはその人にとって初めて言う事だから。脳の傷付いてしまった部分によって一人一人 症状がちがうの!」
潤「分かるよ」
溢れる思いが止まらなくなっちゃって
るな「芳井《よしい》さんはむやみやたらに怒ったりしてるんじゃありません。介護する側の態度や言葉に怒ってらっしゃったんです。左側の脳が傷付いてしまって、右側の半身が麻痺して怒りっぽくなってしまったのは症状の一つなんですよ?介助者が四つ折りまでしてお渡しすると動かせる左手で巻いて下さるおしぼりは本当に綺麗だったわ!」
和也『あの日も、種橋や市の職員に対す態度を怒ったんだもんね……』
カズくん……